「理系に進みたいけれど、数学が苦手……」
「数学ができないなら、理系は諦めた方がいいのだろうか?」
高校生や保護者の方から、このような相談を受けることがあります。
理系というと、
・数学が得意な人が進む
・数学Ⅲまでスラスラ解けないといけない
・数学が苦手なら文系にした方がいい
というイメージを持っている方もいるでしょう。
しかし、数学が苦手だからという理由だけで、すぐに理系を諦める必要はありません。
大切なのは、「数学が苦手」という言葉だけで判断するのではなく、
どのくらいできないのか
どの大学・学部を受験するのか
数学で何点必要なのか
を具体的に確認することです。
この記事では、数学が苦手でも理系大学を受験できるのか、そして数学が苦手な高校生がどのように受験勉強を進めればよいのかを解説します。
数学が苦手でも理系大学を受験することは可能
結論からいえば、数学が苦手でも理系大学を受験することは可能です。
そもそも大学受験は、「数学が得意か・苦手か」で合否が決まるものではありません。
大学・学部ごとに決められた入試科目を受験し、その合計点などによって合否が決まります。
つまり重要なのは、「数学が得意になること」ではなく、「志望校に合格するために必要な数学の点数を取れるようになること」です。
ここは、数学が苦手な高校生にぜひ知っておいてほしいところです。
たとえば数学で満点を取れなくても、英語や理科など他科目で得点し、数学で必要な点数を確保できれば合格できる場合があります。
「数学が苦手=理系には進めない」
とは限らないのです。
ただし「数学を使わなくていい」とは限らない
一方で注意したいのは、「数学が苦手でも理系を受験できる」ことと、「数学ができなくても困らない」ことは別だという点です。
理系学部では数学を入試科目として課す大学が多くあります。
さらに、大学に入ってから数学を使う学部も少なくありません。
特に、
・理学部
・工学部
・情報系学部
・一部の農学系学部
・薬学部
などでは、大学入学後も数学が必要になる可能性があります。
そのため、「数学を完全に捨てて理系に進む」という考え方はおすすめできません。
むしろ、今は数学が苦手でも、大学受験をきっかけに必要な基礎を身につけていくという考え方が大切です。
「数学が苦手」の程度によって対策はまったく違う
ここで一度確認してほしいことがあります。
「数学が苦手」といっても、生徒によって状況はまったく違います。
たとえば、
①学校の定期テストなら平均点程度は取れる
この場合は、理系を諦める必要はほとんどありません。
大学受験レベルの問題になると解けないだけで、数学そのものの基礎が身についていないとは限らないからです。
基礎問題から入試問題へつなぐ練習をすれば、十分に得点できる可能性があります。
②教科書の例題なら分かるが、模試になると解けない
これもよくあるケースです。
このタイプの場合、
「解説を読めば分かる」
ところまではできても、
「何も見ない状態から自分で解法を選び、正解まで持っていく練習」
が不足している可能性があります。
問題集を何冊も増やすより、基本的な問題を自力で再現できる状態にすることが重要です。
③数学Ⅰ・Aや数学Ⅱ・B・Cの基本問題にもかなり抜けがある
この場合は注意が必要です。
入試問題をたくさん解いても、なかなか成績が上がらない可能性があります。
たとえば数学Ⅱの微分・積分が苦手だからといって、微分・積分だけを繰り返せばよいとは限りません。
実際には、
・二次関数
・方程式・不等式
・三角比
・指数・対数
・三角関数
・数列
など、以前に学習した内容に原因があることもあります。
その場合は、できなくなったところまで戻ることが必要です。
理系で数学が苦手なら「志望校から逆算」する
数学が苦手な生徒ほど、最初にやってほしいのが志望校の入試科目・配点・出題内容の確認です。
大学受験の数学は、すべての受験生が同じ問題を解くわけではありません。
大学・学部によって、
・数学の出題範囲
・数学Ⅲが必要か
・共通テストが必要か
・個別試験で数学が課されるか
・数学の配点
・他科目との配点バランス
・問題の難易度
などが違います。
だからこそ、「数学が苦手だから、とにかく数学を勉強する」ではなく、「この大学に合格するには、数学で何点くらい必要なのか」から考えることが大切です。
数学が苦手な人ほど「難しい問題」より「基礎問題」を大切にする
理系志望になると、「難しい数学ができないと合格できないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、数学が苦手な段階で難問ばかり解くことは、必ずしも効率的ではありません。
まず確認してほしいのは、教科書レベルから標準レベルの問題を、自力で正解できるかということです。
ここでいう「できる」とは、「解説を読めば理解できる」という意味ではありません。
問題だけを見て、
・何を使って解く問題なのか判断する
・必要な公式や考え方を思い出す
・自分で式を立てる
・計算する
・答えまで出す
というところまで一人でできることです。
この状態になって初めて、「その問題を解ける」と考えます。
「解説を見れば分かる」から抜け出すことが重要
数学が苦手な高校生を指導していると、非常に多いのが、「解説を見れば分かるけれど、自分では解けない」という状態です。
しかし大学入試では、当然ながら解説を見ることはできません。
必要なのは、何も見ない状態で、自分の頭の中から必要な知識を取り出す力です。
そのため、問題集を勉強するときも、「解説を読んで理解したから次へ進む」だけでは不十分です。
解説を読んだ問題は、時間を空けてもう一度解いてみましょう。
そして、解説を見ずに最初から最後まで正解できるかを確認します。
できなければ、まだその問題は身についていません。
数学が苦手なら問題集を増やしすぎない
受験が近づいてくると不安になり、
「この参考書もやった方がいい」
「この問題集も有名だからやっておこう」
と教材を増やしてしまう人がいます。
数学が苦手な生徒の場合、これは特に注意が必要です。
1冊目が十分に身についていない状態で2冊目、3冊目へ進んでも、「見たことのある問題だけが増えて、自力で解ける問題が増えない」ことがあります。
それよりも、一度取り組んだ基本問題について、問題だけを見たら、自分で解法を思い出して最後まで解けるところまで繰り返した方がよい場合があります。
大学受験では、「何冊やったか」より「何問を自力で解けるようになったか」を大切にしてください。
数学が苦手な理系受験生の勉強手順
数学に苦手意識がある場合は、次の順番を意識するとよいでしょう。
①現在の実力を確認する
模試の偏差値だけではなく、基本問題を実際に解いて確認します。
「どの単元から分からなくなっているのか」を探すことが重要です。
②分からなくなった単元まで戻る
高校3年生だからといって、高3の内容だけを勉強する必要はありません。
数学Ⅱができない原因が数学Ⅰにあるなら、数学Ⅰまで戻ります。
場合によっては、中学校数学の計算や方程式まで確認することもあります。
③基本問題を何も見ずに解けるようにする
例題を読んで終わりにせず、自分で解き直します。
「分かった問題」ではなく、「自力で正解できる問題」を増やしていきます。
④単元を混ぜて問題を解く
一つの単元だけを勉強していると、「今日は数列だから、この公式を使うのだろう」と予想できてしまいます。
入試では、どの解法を使うか自分で判断しなければなりません。
そのため基礎が身についてきたら、複数単元を混ぜた問題にも取り組みます。
⑤過去問で志望校との差を確認する
基礎がある程度身についたら、志望校の過去問を使います。
この段階では、単に合格最低点と比較するだけではなく、「どの問題なら取れたはずなのか」を見ることが重要です。
基本問題を落としているのであれば基礎へ戻ります。
知識はあるのに時間が足りないのであれば、時間を測った演習を増やします。
こうして、過去問から日々の学習内容へ戻していきます。
数学が苦手でも理系を選んでよい人
特に、
「数学は苦手だけれど、理科が好き」
「情報系に進みたい」
「将来やりたい仕事に理系の知識が必要」
「工学や研究に興味がある」
という人は、数学が苦手という理由だけで進路を変える必要はありません。
高校生の段階での「得意・苦手」が、そのまま将来の適性を決めるわけではないからです。
むしろ考えたいのは、「数学が苦手でも、その分野を学ぶために必要な数学を勉強する意思があるか」です。
今できるかどうかだけでなく、これから必要なところまで伸ばせるかを考えてみてください。
理系を選ぶ前に慎重に考えた方がよいケースもある
もちろん、誰にでも無条件で理系をおすすめするわけではありません。
たとえば、
・数学だけでなく理科にも興味がない
・行きたい学部が特に決まっていない
・「なんとなく理系の方が就職に有利そう」という理由だけで選んでいる
・数学を今後勉強すること自体を避けたい
という場合は、一度進路そのものを考え直してもよいでしょう。
大切なのは、
「数学が苦手だから文系」
「数学が得意だから理系」
という単純な決め方をしないことです。
大学で何を学びたいのか、そのためにはどの科目が必要なのかを確認して進路を決めましょう。
高3で数学が苦手でも間に合う?
これは現在の学力と志望校によって変わります。
そのため、「高3からでも絶対に間に合う」とは言えません。
ただし、数学が苦手な高校3年生ほど、残された時間をすべて難しい入試問題に使うのではなく、
「自分が確実に取るべき問題を取れる状態にする」
ことが重要です。
たとえば入試問題を解いて10点、20点しか取れなかったとしても、「数学が全部できない」と考える必要はありません。
問題を一つずつ分析すると、
・本当に知らなかった問題
・公式を忘れていた問題
・計算ミスをした問題
・解き方は知っていたのに思い出せなかった問題
・時間があれば解けた問題
・今の実力では難しすぎる問題
に分けられます。
この中で、優先して改善したいのは、「本来なら取れたはずの問題」です。
ここを一つずつ得点に変えることで、数学の点数は変わっていきます。
「数学が苦手」を理由に志望校を決める前に
数学が苦手な高校生に一番避けてほしいのは、「数学ができないから、この大学は無理」と現在の成績だけで判断してしまうことです。
まず調べるべきなのは、現在地と志望校との差です。
そして、その差を、「数学全部」として捉えるのではなく、
「二次関数の基本問題ができない」
「数列の漸化式が苦手」
「微分はできるが積分ができない」
「共通テスト形式になると時間が足りない」
というように細かく分けていきます。
課題が具体的になれば、勉強する内容も具体的になります。
数学が苦手な生徒ほど、「数学を頑張る」のではなく、「次に何ができるようになればいいのか」を明確にすることが大切です。
まとめ|数学が苦手でも理系受験は可能。ただし戦略は必要
数学が苦手だからといって、理系大学への進学を最初から諦める必要はありません。
重要なのは、「数学が苦手」という曖昧な状態のまま受験勉強を続けないことです。
まず、
・志望校では数学がどの程度必要なのか
・現在どの単元まで理解できているのか
・どこから学び直す必要があるのか
・入試までに何点まで伸ばす必要があるのか
を整理します。
そのうえで、難しい問題へ急ぐのではなく、基本問題を何も見ずに自力で正解できる状態まで繰り返していきましょう。
数学が苦手な生徒の場合、「もっと難しい問題を解かなければ」と考えるよりも、今まで習ったことを自分一人で使える状態にすることの方が先です。
理系に進めるかどうかを「数学が得意か苦手か」だけで決める必要はありません。
志望校合格に必要な数学と現在の実力との差を明確にし、その差を一つずつ埋めていく。
それが、数学に苦手意識のある理系受験生にとって大切な受験対策です
