「高校に入ってから数学が分からなくなってしまった」
「数学Ⅰの最初から全部やり直した方がいいのか、それとも中学数学まで戻った方がいいのか分からない」
高校数学が苦手になった生徒を指導していると、このように高校数学をどこからやり直せばよいのか分からないというケースが多く見受けられます。
保護者の方から見ても、
- 学校の授業についていけていない
- 定期テストや模試の点数が低い
- 問題集をやっているのに成績が上がらない
- 解説を読めば理解できるようだが、自力では解けない
- 数学ⅠAから全部復習させた方がよいのか分からない
といった状態では、「では、どこまで戻ればいいのか」を判断するのは簡単ではありません。
しかし、高校数学のやり直しは、必ずしも数学Ⅰの最初からすべて復習する必要はありません。
大切なのは、現在の学年から考えるのではなく、「今解けない問題は、何が分からないから解けないのか」を確認し、その原因となっている単元まで戻ることです。
たとえば、数列の問題が解けない高校生がいたとします。
この場合、「数列が苦手だから数列を最初から復習しよう」と考えがちです。
ところが実際に問題を解いてもらうと、数列の考え方ではなく、文字式の処理や方程式の計算で止まっていることがあります。
この場合、数列の問題を何問繰り返しても、根本的な部分はなかなか改善しません。
必要なのは、数列を繰り返すことではなく、数列を解くために必要な文字式や方程式まで戻って復習することです。
同じことは、二次関数、場合の数・確率、三角関数、ベクトル、微分・積分などでも起こります。
また、大学受験のために高校数学をやり直す場合は、現在の苦手だけでなく、志望校でどの程度の数学が必要なのかも考える必要があります。
すべての単元を同じ時間をかけて復習すればよいとは限らないからです。
この記事では、高校数学が苦手な生徒を指導してきた経験をもとに、
- 高校数学はどこからやり直せばよいのか
- 中学数学まで戻った方がよいのはどのような場合か
- 苦手な単元ごとに、どの前提単元まで戻ればよいのか
- やり直した内容を「できるようになった」と判断する基準
- 大学受験を考える場合、どのように復習の優先順位を決めるか
について順番に解説します。
この記事の目的は、高校数学を最初から全部やり直すことではなく、「自分はまず何を復習する必要があるのか」を見つけられるようにすることです。
高校数学のやり直しはどこから始めればいい?
高校数学のやり直しは、「数学Ⅰの最初から」ではなく、現在解けない問題の原因となっている単元から始めるのが基本です。
高校数学は、それ以前に学んだ内容を使いながら新しい内容を学んでいくため、現在習っている単元だけを繰り返しても、その前提となる内容に抜けがあれば解けるようにならないことがあります。
そのため、
【高校数学をやり直すときの基本】
今できない単元を確認する
↓
何が原因で解けないのかを確認する
↓
必要な前提単元まで戻る
↓
基本問題を自力で解ける状態にする
↓
元の単元へ戻る
という順番で考えます。
数学Ⅰの最初から全部やり直す必要はある?
高校数学が苦手だからといって、数学Ⅰの最初から全部やり直す必要があるとは限りません。
たとえば高校2年生で数Ⅱの問題が解けない場合でも、数学Ⅰ全体を一から復習する必要があるとは限りません。
重要なのは、実際に問題を解いてみて、どの段階で手が止まるのかを確認することです。
たとえば二次関数の最大・最小が苦手な場合を考えてみましょう。
問題が解けない原因としては、
- 平方完成ができない
- 二次方程式の計算が不安定
- 一次関数のグラフを十分に理解していない
- 座標の意味が曖昧
- そもそも「関数」が何を表しているのか理解できていない
など、さまざまな可能性があります。
平方完成だけが原因なら、そこを重点的に復習すればよいでしょう。
一方、一次関数や座標から理解が曖昧なのであれば、中学数学まで戻る必要があります。
つまり、
「高校数学が苦手=数学Ⅰから全部やり直す」
ではなく、
「現在の問題を解くために不足している知識まで戻る」
と考えることが重要です。
この方法なら、すでにできている内容に必要以上の時間をかけることも避けられます。
特に大学受験に向けた数学の基礎固めでは、使える時間に限りがあります。
できる単元まで一律に最初からやり直すよりも、まず現在の理解度を確認し、必要なところに時間を使う方が現実的です。
中学数学まで戻った方がいいのはどんな高校生?
文字式・方程式・関数・図形など、高校数学の前提となる中学数学で頻繁に止まる場合は、中学数学まで戻って確認した方がよいでしょう。
高校生に「中学数学からやり直そう」と言うと、かなり前まで戻るように感じるかもしれません。
しかし、高校数学には中学数学を前提としている内容が多くあります。
たとえば、
- 因数分解 → 中学の展開・因数分解・文字式
- 二次関数 → 一次関数・座標・方程式
- 三角比 → 相似・三平方の定理・図形
- 高次方程式 → 方程式・因数分解
- ベクトル → 座標・図形・比
というようにつながっています。
そのため、中学数学の前提知識が曖昧なまま高校数学だけを勉強すると、高校数学の新しい内容と、中学数学の復習を同時に行わなければならない状態になります。
これでは、一つの問題を理解するために必要な負担が大きくなります。
実際の指導でも、私は「高校生だから高校数学だけを教える」とは考えていません。
問題を解いてもらい、その問題ができない原因を確認します。
そして原因が中学数学にあるのであれば、その単元まで戻ります。
ただし、ここでも重要なのは、中学数学を最初から全部やり直すとは限らないということです。
たとえば二次関数につまずいていて、その原因が一次関数にあるなら、まず一次関数を確認します。
一次関数は理解できているものの、方程式の計算だけが不安定なら、方程式を重点的に復習します。
「中学数学からやり直すか、高校数学からやり直すか」という二択ではなく、今のつまずきに必要なところまで戻ると考える方が適切です。
「何年生の内容か」より「何ができないか」で戻る場所を決める
高校数学をやり直す場所は、「今、高校何年生なのか」だけでは決められません。
「何ができないために、現在の問題が解けないのか」を確認して決めます。
同じ高校2年生で、同じ数学のテストが40点だったとしても、必要な復習内容が同じとは限りません。
一人は、
「公式や基本的な計算はできるが、問題を見てもどの解法を使えばよいか判断できない」
という状態かもしれません。
もう一人は、
「そもそも式変形や方程式の計算で何度も止まってしまう」
という状態かもしれません。
前者であれば、必ずしも中学数学まで戻る必要はありません。
基本知識を使って問題を解く練習を増やす方が優先される可能性があります。
一方、後者の場合は、現在習っている単元の問題演習を増やすよりも、文字式・方程式などの前提となる内容まで戻った方がよい場合があります。
この違いを確認しないまま、
「数学が苦手だから基礎問題集を最初からやる」
「数学ⅠAを全部復習する」
「とりあえず問題数を増やす」
と決めても、勉強時間のわりに成果につながらないことがあります。
高校数学をやり直すときには、次の3点を分けて確認すると、戻る場所を見つけやすくなります。
【どこからやり直すかを決める3つの確認】
① 現在、どの問題まで自力で解けるか
解説を見ない状態で確認します。② 解けない問題の「どこ」で止まったか
公式を知らないのか、計算できないのか、問題の方針が立たないのかを確認します。③ その問題に必要な前提知識は何か
必要であれば、数学Ⅰや中学数学までさかのぼります。
そして、大学受験を考えている場合には、もう一つ確認したいことがあります。
それが、「志望校では、どの数学をどのレベルまでできる必要があるのか」です。
高校数学には多くの単元があります。
限られた期間ですべてを同じようにやり直すのではなく、
「現在どこでつまずいているのか」
「大学受験でどこまで到達する必要があるのか」
の両方を確認して、やり直す範囲を決めることが重要です。
次のセクションでは、因数分解・高次方程式、二次関数、場合の数・確率、三角比・三角関数、数列、ベクトル、微分・積分、データの分析・統計など、具体的な単元ごとに「苦手な場合はどこまで戻ればよいのか」を詳しく見ていきます。
高校数学が苦手になった原因はどこにある?
高校数学が苦手になった原因は、現在できない単元そのものにあるとは限りません。
高校数学は複数の単元がつながっているため、「どの単元が苦手か」だけでなく、「その問題のどこで止まっているのか」まで確認することが重要です。
たとえば「ベクトルが苦手」という高校生でも、ベクトルの考え方が理解できていない場合と、図形や座標の知識が不足している場合とでは、やり直す内容が違います。
ここでは主要な単元ごとに、どのような内容まで戻って確認すればよいのかを見ていきます。
因数分解・高次方程式が苦手なら、どこまで戻る?
因数分解や高次方程式が苦手なら、公式だけを覚え直すのではなく、中学数学の展開・因数分解・方程式と、高校数学の式の扱いまで確認します。
因数分解は、高校数学のさまざまな単元で必要になります。
たとえば、高次方程式を解く場合でも、式を因数分解できなければ解を求めるところまで進めません。
また、因数定理を知っていても、その後の式変形ができなければ正解にはたどり着けません。
次のようなところで手が止まる場合は、前の内容まで戻る必要があります。
- 展開の計算で符号を間違える
- 共通因数でくくることができない
- 基本的な因数分解の公式を使えない
- 二次方程式を正確に解けない
- 文字を含む式の整理に時間がかかる
- 因数定理を使った後の計算ができない
特に確認したいのは、「因数分解の方法を知らない」のか、「その前の式の計算が不安定なのか」という違いです。
たとえば、高次方程式の解き方を何度説明しても、その途中にある因数分解で毎回止まるのであれば、高次方程式の問題を増やすことが優先ではありません。
中学数学の展開・因数分解や方程式を何も見ずに解けるか確認し、そこが不安定なら先に復習します。
二次関数が苦手なら、どこまで戻る?
二次関数が苦手なら、平方完成だけでなく、一次関数・座標・方程式・グラフの理解まで確認します。
二次関数では、式を計算できるだけでは十分ではありません。
式とグラフの関係を理解し、
- 頂点はどこか
- 軸はどこか
- グラフがどちらに開くか
- 定義域が変わると最大値・最小値がどう変わるか
などを考える必要があります。
そのため、二次関数でつまずいている場合は、まず平方完成を自力でできるかを確認します。
平方完成ができるのにグラフを描けない場合は、座標や関数の理解を確認します。
さらに、「xが増えるとyがどのように変化するのか」という関数そのものの考え方が曖昧なら、中学数学の一次関数まで戻る必要があります。
二次関数の問題を繰り返しているのに成績が伸びない場合、二次関数の公式をもう一度覚えることより、一次関数や座標を含めて「式とグラフを結びつけられているか」を確認することが重要です。
場合の数・確率が苦手なら、どこまで戻る?
場合の数・確率が苦手なら、順列や組合せの公式だけでなく、「何を1通りとして数えるのか」「どのように場合分けするのか」という数え方の基礎まで戻って確認します。
場合の数・確率では、公式を覚えていても問題が解けないケースが多くあります。
たとえば、
- 順列と組合せのどちらを使えばよいか分からない
- 同じものを含む場合の数え方が分からない
- 「少なくとも」という条件を整理できない
- 条件によって場合分けする必要があることに気づかない
- 確率の分母と分子に何を置けばよいか分からない
という状態です。
この場合、単純に順列・組合せの公式を覚え直しても改善しないことがあります。
まずは、樹形図を書いたり、小さい数で実際に場合を書き出したりして、「何を数えているのか」を自分で説明できるかを確認します。
たとえば「5人から2人を選ぶ」という問題でも、公式を使う前に、順番を区別するのかしないのかを判断できなければなりません。
場合の数・確率では、公式を使えることより前に、問題の条件を整理し、重複や漏れなく数えられることが基礎になります。
三角比・三角関数が苦手なら、どこまで戻る?
三角比・三角関数が苦手なら、公式だけでなく、中学数学の相似・三平方の定理・図形、さらに関数やグラフの理解まで確認します。
数学Ⅰの三角比では、直角三角形の辺の比を扱います。
そのため、
- 相似な図形の対応する辺が分からない
- 三平方の定理を使えない
- 図の中から必要な直角三角形を見つけられない
- 辺の長さの比を正しく立てられない
という状態では、sin・cos・tanの定義だけを覚えても問題を解きにくくなります。
この場合は、中学数学の相似や三平方の定理まで戻って確認する方がよいでしょう。
さらに数学Ⅱの三角関数になると、単位円やグラフも扱います。
三角比の理解に加えて、関数や座標、グラフの読み取りが不安定だと、公式を覚えてもそれぞれの式が何を表しているのか理解しにくくなります。
三角比・三角関数では、公式を何個覚えているかだけでなく、図・式・グラフを結びつけて考えられるかを確認することが重要です。
数列が苦手なら、どこまで戻る?
数列が苦手なら、等差数列・等比数列の公式だけでなく、文字式・方程式・指数の計算や、数の規則を式で表す力まで確認します。
数列では、公式を覚えているのに問題になると手が止まる高校生もいます。
たとえば、
- 第n項を文字で表すことに慣れていない
- 等差数列と等比数列を区別できない
- 文字を含む方程式を処理できない
- 指数の計算が不安定
- Σが出てくると何を計算しているのか分からなくなる
といった状態です。
この場合、「数列の公式をもう一度覚えよう」だけでは十分ではありません。
特に、nを使って規則を表すことに慣れていない場合は、具体的な数の並びと一般項の式を行き来できるかを確認します。
また、数列の問題では方程式を立てて項数などを求めることもあります。
数列の考え方は理解できているのに答えまで出せない場合、原因が方程式の処理にある可能性もあります。
数列では「公式を知っているか」と「その公式を使って式を作り、最後まで計算できるか」を分けて確認することが必要です。
ベクトルが苦手なら、どこまで戻る?
ベクトルが苦手なら、ベクトルの公式だけでなく、座標・図形・比・内分など、図形を式で表すための前提知識まで確認します。
ベクトルでは、図形的な情報を式に置き換えて考える場面が多くあります。
そのため、
- 座標平面上の点を正しく扱えない
- 線分の比を式に表せない
- 内分点の考え方が曖昧
- 図のどの部分をベクトルで表せばよいか分からない
- 係数の意味を図と結びつけられない
という状態では、公式だけを覚えても問題に対応しにくくなります。
たとえば位置ベクトルの問題で手が止まる場合、ベクトルそのものが理解できていないとは限りません。
図形上の点と点の関係や、比の意味が理解できていないこともあります。
その場合は、座標や図形、比の扱いまで戻って確認します。
ベクトルでは、式だけを追うのではなく、「この式が図のどの部分を表しているのか」を対応させられることが重要です。
微分・積分が苦手なら、どこまで戻る?
微分・積分が苦手なら、微分・積分の計算だけでなく、関数・方程式・不等式・グラフ・式変形まで確認します。
たとえば微分では、導関数を求めることができても、その後の増減表や最大値・最小値の問題になると解けないことがあります。
この場合、微分計算ではなく、
- 方程式を解けない
- 正負を正しく調べられない
- 関数の増減とグラフの関係が分からない
- 最大値・最小値の意味が曖昧
といったところに原因がある可能性があります。
積分でも同様です。
不定積分や定積分の計算方法を覚えていても、面積の問題ではグラフを描き、どちらの関数が上にあるかを判断し、必要な区間を求めなければなりません。
そのため、微分・積分の計算ができるかだけで「微積分ができる」と判断しないことが重要です。
特に理系の大学受験数学では、微分・積分が他の単元と組み合わされることもあります。
微積分の問題でつまずいたときは、微積分そのものだけでなく、二次関数をはじめとする関数、方程式、不等式、グラフなどの基礎に抜けがないかも確認します。
データの分析・統計の基礎が苦手なら、どこまで戻る?
データの分析・統計が苦手なら、用語や公式だけでなく、平均・割合・資料の読み取り・基本的な計算まで戻って確認します。
データの分析では、
- 平均値
- 中央値
- 四分位数
- 四分位範囲
- 分散
- 標準偏差
- 相関
など、複数の用語が出てきます。
そのため、「公式を覚えれば解ける単元」と考えてしまうことがあります。
しかし実際には、計算結果を出すだけではなく、その数値がデータのどのような特徴を表しているのかを理解することが必要です。
たとえば平均の考え方自体が曖昧であれば、分散や標準偏差を学んでも、それが何を表す数値なのか理解しにくくなります。
また、表やグラフから必要な情報を読み取れない場合は、統計の公式以前のところで止まっていることになります。
このような場合には、
- 平均を求められるか
- 割合を正しく計算できるか
- 表から必要な数値を読み取れるか
- グラフが何を表しているか説明できるか
といった基本から確認します。
データの分析・統計では、「公式に代入できるか」だけではなく、「その数値を求める意味を理解しているか」まで確認することが、基礎のやり直しでは重要です。
「分かるのに解けない」場合はどこをやり直す?
「授業や解説を聞けば分かるのに、自分で問題を解こうとすると解けない」という場合、必ずしも前の学年や単元まで戻る必要はありません。
高校生を指導していると、「分かるのに解けない」という状態には、大きく分けて次のような原因があります。
- 問題文そのものを正しく理解できていない
- 解説を読めば理解できるが、自分では最初の方針を決められない
- 解説に書かれた解き方だけを覚えていて、その解法をどのような問題で使うのか分かっていない
- 公式は覚えているが、どの問題で使えばよいか判断できない
- 解説を見た直後は解けるが、時間が経つと解けなくなる
これらは、単純に「数学の知識が足りない」という状態とは異なります。
そのため、「解けないからもっと前の単元へ戻ろう」と考える前に、問題文の理解・必要な知識の選択・解法の選択・自力での再現のどこで止まっているのかを確認することが重要です。
問題文を理解できない場合はどうする?
問題文を読んでも「何を求めればよいのか」「与えられた条件をどう使えばよいのか」が分からない場合は、解き方を覚える前に、問題文から数学的な条件を取り出す練習が必要です。
高校数学が苦手な生徒を見ていると、計算以前の段階で止まっていることがあります。
たとえば問題文を読んだあとに、
「この問題は何を求めるの?」
「問題文から何が分かっているの?」
と聞いても、答えられないケースです。
この状態では、解説を読めば計算方法を追うことはできても、自分で問題を解くのは難しくなります。
数学の問題を自力で解くためには、少なくとも、
- 何が与えられているのか
- 何を求めるのか
- 与えられた条件から何が分かるのか
- 求めるものを出すために、どの条件を使うのか
を整理する必要があります。
たとえば数列の文章題であれば、「初項」「公差」「第何項」といった言葉を探すだけでは十分ではありません。
問題文に書かれた数量の関係から、
「この数列は等差数列なのか」
「何が分かれば求めたいものを出せるのか」
まで考える必要があります。
確率でも同様です。
「少なくとも1回」という条件を読んだときに、その言葉を知っているだけでなく、その条件がどのような場合を表しているのかを理解できなければ、余事象を利用するという考え方にはつながりません。
したがって、問題文を理解できていない生徒に対しては、すぐに解説を見せるのではなく、
【問題を解く前に確認すること】
① 何を求める問題なのか
② 問題文から分かっていることは何か
③ 条件を式・図・グラフなどに表せないか
④ 求めたいものと、与えられた条件がどうつながるのか
を自分の言葉で整理してもらいます。
問題文を理解できていない状態で解法だけを覚えても、少し問題の表現が変わると対応できなくなる可能性があります。
高校数学のやり直しでは、「公式を忘れている」「計算ができない」だけでなく、問題文から必要な情報を取り出せているかも確認する必要があります。
解説を読めば分かるのに、自力で解けないのはなぜ?
解説を理解できることと、何も見ずに自分で解法を選んで問題を解けることは別です。
解説には、問題を解くうえで重要な判断がすでに書かれています。
たとえば二次関数の問題で、解説の最初に、
「平方完成すると」
と書かれていれば、「この問題では平方完成をする」という判断を自分でする必要がありません。
数列でも、
「これは等比数列なので」
と書かれていれば、どの考え方を使えばよいのかを解説が教えてくれています。
そのため、解説を読んで、
「なるほど、分かった」
と思っても、次に何も見ずに同じ問題を解こうとすると、最初の一行が書けないことがあります。
これは、計算方法を理解していないとは限りません。
「この問題では何を使えばよいのか」という判断を、自分ではまだできていない可能性があります。
実際の大学受験の数学では、
「ここで平方完成をしなさい」
「この問題では余事象を使いなさい」
「この数列では漸化式を使いなさい」
とは書かれていません。
問題文を読んで、自分で解法を選ぶ必要があります。
そのため私は指導でも、説明をしたあとに「分かった?」と確認して終わりにはしません。
内容を理解できたら、解説を閉じて、もう一度問題を解いてもらいます。
そこで、
「問題を見たときに必要な考え方を自分で思い出し、最初の式を自分で作り、最後まで解けるか」
を確認します。
ここまでできて初めて、その問題について自力で解く段階に進んだと考えます。
解説だけ覚えても、なぜ別の問題になると解けない?
解説の手順だけを覚えている場合、「その解き方がどのような問題に使えるのか」を理解できていないため、問題の見た目が変わると解法を選べないことがあります。
これは、数学が苦手な高校生を指導するうえで、特に確認したい点です。
たとえば、ある問題について、
「この問題は、まずこの式を作って、そのあとこれを代入して、最後に因数分解する」
という手順を覚えたとします。
同じ問題であれば、その手順を再現して正解できるかもしれません。
しかし、本来理解してほしいのは手順そのものだけではありません。
「なぜこの問題では、その解き方を使うのか」
という部分です。
たとえば確率で余事象を使う問題を学習したのであれば、
「この問題では余事象を使った」
と覚えるだけでは不十分です。
「少なくとも1回起こる確率を直接すべて数えるより、1回も起こらない場合を考えた方が求めやすい」
という考え方まで理解する必要があります。
そこまで理解できれば、数字や問題文が変わっても、
「これも『少なくとも』を求める問題だから、余事象を考えられないか」
と判断できるようになります。
数列でも同様です。
ある漸化式の問題について解説の変形手順だけを覚えるのではなく、
「なぜこの形に変形するのか」
「この変形によって、すでに知っているどの数列として考えられるのか」
まで理解することが必要です。
つまり、数学の解説を学習するときには、
「どう解いたか」だけではなく、「なぜその解き方を選んだのか」
「その解法は、どのような条件を持つ問題で使えるのか」
「問題文のどの部分を見て、その解法を選べるのか」
まで確認します。
解法を一つの問題とセットで丸暗記するのではなく、「この解法を使える問題にはどのような特徴があるのか」を把握することが重要です。
これができていない場合、参考書の例題を何度も復習しているのに、模試や入試問題になると解けないという状態が起こりやすくなります。
公式を覚えているのに問題が解けない場合は?
公式を覚えているのに問題が解けない場合は、公式そのものではなく、「どのような条件の問題で、その公式を使えるのか」を判断する練習が不足している可能性があります。
高校数学では、一つの単元の中でも複数の公式や解法を使い分けます。
たとえば、場合の数・確率を勉強して、
- 順列
- 組合せ
- 確率
- 余事象
などを覚えたとします。
それでも実際の問題では、
「順番を区別するのか」
「選ぶだけなのか」
「直接求めるのか」
「余事象から求めた方がよいのか」
を自分で判断しなければなりません。
数列でも、等差数列・等比数列の一般項や和の公式を覚えるだけでは十分ではありません。
問題文を読んで、
「何を求める問題なのか」
「どの条件が与えられているのか」
「その条件なら、どの公式が使えるのか」
を判断する必要があります。
そのため、公式を覚えているのに問題が解けない場合は、公式をさらに暗記するより、
- この公式は何を求めるためのものなのか
- どのような条件がそろったときに使えるのか
- 問題文のどこを見れば、その公式を使えると判断できるのか
を確認します。
公式の暗記から、「問題と公式を対応させる学習」へ進む必要があります。
また、基礎問題を一通り学習したあとは、同じ種類の問題だけを続けるのではなく、複数の解法を使う問題を混ぜて解くことも有効です。
単元名や直前に学習した内容を手がかりにするのではなく、問題文を読んで必要な知識を自分で選ぶ練習になるからです。
やり直した単元を「できるようになった」と判断する基準は?
やり直した単元は、解説を理解した時点ではなく、問題文を理解し、必要な解法を自分で選び、解説を見ずに類題まで解けた段階で「できるようになった」と判断します。
高校数学をやり直すときに注意したいのが、
「解説を読んで分かった」
「同じ問題をもう一度解いたら正解できた」
という段階で、その単元の復習を終えてしまうことです。
解説を見た直後なら、解法の手順そのものを覚えているため、同じ問題を解けることがあります。
しかし、それだけでは数学の考え方を理解しているのか、直前に見た解答を再現しているだけなのかを判断できません。
私の指導でも、その場で一度正解できただけでは「できるようになった」とは判断していません。
まず、対話によってどこで考え方を間違えていたのかを確認します。
必要な内容を理解できたら、その直後にもう一度問題を解いてもらいます。
そこで正しい考え方で解けることを確認したうえで、同じ問題や類題を家庭学習として取り組んでもらいます。
次の指導時には、その中からこちらで問題を選び、もう一度解いてもらいます。
ここで確認するのは、答えが合っているかだけではありません。
【「できるようになった」と判断するための確認】
① 問題文を読んで、何を求めるのか理解できる
② 与えられた条件から、必要な情報を取り出せる
③ どの公式・考え方・解法を使うのか自分で判断できる
④ なぜその解法を使うのか説明できる
⑤ 解説を見ずに最初の式から最後の答えまで自分で進められる
⑥ 少し時間が経ってからも同じ問題を解ける
⑦ 数字や問題文が変わった類題でも、同じ考え方を使える
⑧ 他の単元と混ざって出題されても、必要な解法を選べる
特に重要なのが、「同じ解き方を使える問題が、どのような問題なのか分かっているか」です。
たとえば、「この問題では余事象を使った」と覚えているだけではなく、
「少なくとも○○という条件があるから、反対に一度も起こらない場合を考える方法が使える」
というところまで理解できているかを確認します。
この違いを見ることで、「もっと前の単元へ戻るべきなのか」「現在の単元で問題文を読み取る練習が必要なのか」「解法を選ぶ練習が必要なのか」を分けて考えられます。
高校数学のやり直しでは、「何を知らないのか」だけでなく、「問題文を理解できるか」「知っている解法をどんな問題で使えるか分かっているか」「それを自力で取り出せるか」まで確認することが重要です。
自分がどこでつまずいているか調べる方法は?
自分が数学のどこでつまずいているのかを調べるには、問題の正誤だけでなく、「数学用語を正しく理解しているか」「問題文を正しく読めているか」「必要な解法を選べるか」「計算できるか」を順番に確認する必要があります。
高校生を指導していると、「二次関数ができない」「確率が苦手」と本人が思っていても、実際にはその単元の解法以前のところでつまずいていることがあります。
特に確認したいのが、次のような状態です。
- 数学用語の意味を正しく理解していない
- 数学用語を知っていても、その用語を問題の中でどのように使うのか分からない
- 問題文に書かれている条件を正しく読み取れない
- 何を求める問題なのかを把握できない
- 公式は覚えているが、どのような問題で使うのか分からない
- 解説の手順は覚えているが、問題が変わると解法を選べない
- 方針は分かっていても、途中の計算で止まる
そして、このような生徒の学習状況を確認すると、問題集や参考書は勉強していても、学校の教科書の本文をほとんど読んでいないということがあります。
高校数学をやり直すというと、「どの問題集を使えばよいか」「どの参考書がおすすめか」に意識が向きやすいのですが、問題を解くために必要な用語や定義は、まず教科書できちんと確認しておきたい内容です。
問題を解く以前の「数学の言葉」が分かっていないのであれば、問題集を繰り返すだけではなく、教科書の説明まで戻る必要があります。
まず「数学用語とその使い方」を理解しているか確認する
問題を解く前に、その単元で使われる数学用語の意味を、自分の言葉で説明できるか確認します。
高校数学では、中学数学までと比べても新しい数学用語が多く登場します。
たとえば、
- 必要条件・十分条件
- 定義域・値域
- 判別式
- 排反
- 余事象
- 一般項
- 漸化式
- 極大・極小
- 接線
- 分散・標準偏差
などです。
こうした言葉について、「授業で聞いたことがある」「参考書で見たことがある」というだけでは、問題を解くためには十分ではありません。
たとえば「排反」という言葉の意味が分からなければ、
「AとBは互いに排反である」
と問題文に書かれていても、その条件をどのように使えばよいのか分かりません。
「定義域」という言葉を正しく理解していなければ、二次関数の最大値・最小値を求める問題でも、どの範囲で考えればよいのか分からなくなります。
「一般項」の意味が曖昧なら、数列で「一般項を求めよ」と書かれていても、そもそも何を求めれば正解なのかが明確になりません。
つまり、数学用語は、単に言葉の意味を暗記するのではなく、「その言葉が問題に出てきたときに何を意味し、解答にどう関係するのか」まで理解する必要があります。
ここで役立つのが高校数学の教科書です。
問題集や受験用参考書では、問題を解くためのポイントや解法が簡潔にまとめられていることがあります。
一方、教科書には、新しい概念を学ぶ際に、
「このようなものを○○という」
「○○を△△と定義する」
といった形で、数学用語や定義が説明されています。
問題を解いていて知らない言葉が出てきたら、解答だけを確認するのではなく、教科書の該当箇所まで戻って、
① その用語は何を意味するのか
② どのような場合にその用語を使うのか
③ 問題文に出てきたとき、どのような条件を表しているのか
④ その条件を解答の中でどのように使うのか
まで確認します。
「数学用語を知っている」と「数学用語を使って問題を解ける」は別です。
高校数学の基礎をやり直す場合には、公式や計算だけでなく、この部分も確認する必要があります。
問題集・参考書だけでなく、教科書の本文を読む
数学用語や問題文の意味が分からない場合は、問題集を増やすよりも、まず教科書の該当単元の本文を読んで、定義や基本的な考え方を確認することをおすすめします。
高校生を見ていると、数学の勉強を、
「問題集を解くこと」
だと考えていることがあります。
学校から配られた問題集を解く。
分からなければ解説を見る。
大学受験用の参考書を買って例題を解く。
さらに分からなければ動画を見る。
このような学習をしていても、学校の数学の教科書そのものはほとんど読んでいないという生徒もいます。
もちろん、数学の成績を上げるためには問題演習が必要です。
しかし、問題集は基本的に「問題を解くための教材」です。
そのため、数学用語や定義、なぜその考え方をするのかという基礎的な説明を十分に理解していない場合、問題演習だけを増やしても、
「この問題は、この公式を使う」
「この形が出たら、この解き方をする」
という覚え方になりやすくなります。
すると、問題文の表現が少し変わっただけで解けなくなることがあります。
たとえば二次関数を勉強するのであれば、平方完成のやり方だけを覚えるのではなく、
「関数とは何か」
「定義域とは何か」
「値域とは何か」
「最大値・最小値とは何を意味するのか」
といった言葉も理解しておく必要があります。
問題集で解き方を練習する前提として、教科書でその単元の「言葉」と「基本的な考え方」を理解することが大切です。
特に、参考書の解説を何度読んでも問題を自力で解けない場合には、一度教科書に戻ってみてください。
「もっと難しい参考書が必要なのではなく、そもそも教科書に書かれている定義や基本事項を理解できていなかった」ということもあります。
「問題文の文章の読み方」を知っているか確認する
数学の問題文を理解できない場合は、文章を最初から最後まで何度も読むだけでなく、「何が与えられていて、何を求めるのか」を分けて読む練習が必要です。
高校数学の問題文は、単なる日本語の文章ではありません。
一つの文章の中に、
- 数値
- 数式
- 数学用語
- 条件
- 求めるもの
が含まれています。
そのため、問題文を読んだら、少なくとも次のことを整理します。
【数学の問題文を読むときの確認】
① 何を求める問題なのか
② 何が与えられているのか
③ どの条件が重要なのか
④ その条件を式・図・グラフなどに置き換えられるか
⑤ 求めるものと与えられた条件を、どのようにつなげればよいか
たとえば、
「aを正の定数とする」
と書かれていれば、「aという文字がある」と読むだけではありません。
a>0という条件が与えられていると読み取る必要があります。
「異なる2つの実数解をもつ」と書かれていれば、その文章を判別式などの数学的な条件へ置き換えて考える必要があります。
確率の問題で「少なくとも1回」と書かれていれば、「少なくとも」という日本語がどのような場合を含んでいるのかを理解する必要があります。
数列で「初項から第n項までの和」と書かれていれば、何を足したものなのかを把握しなければなりません。
このように、高校数学では「文章を読む」ことと「文章を数学的な条件として読み取る」ことは同じではありません。
問題文が理解できない生徒には、すぐに式を立てさせるのではなく、
「何を求める問題?」
「何が分かっている?」
「この言葉はどういう意味?」
「この条件を式にするとどうなる?」
と一つずつ確認することが有効です。
教科書の例題・基本問題を何も見ずに解いてみる
数学用語と問題文の意味を確認したら、次に教科書の例題や基本問題を、解説を見ずに解いてみます。
ここで初めて、「知識として理解している内容を、自分で問題に使えるか」を確認します。
たとえば二次関数であれば、
- 平方完成ができるか
- 頂点と軸を求められるか
- グラフを描けるか
- 定義域を読み取れるか
- 最大値・最小値を求められるか
などを確認します。
ただし、正解・不正解だけで判断してはいけません。
【基本問題で確認すること】
① 問題文の数学用語を理解できたか
② 何を求める問題なのか分かったか
③ 与えられた条件を整理できたか
④ 最初に何をすればよいか自分で判断できたか
⑤ 必要な公式や考え方を思い出せたか
⑥ 式を立てたあと、最後まで計算できたか
まで確認します。
たとえば最後の計算だけを間違えたのであれば、その単元を最初からやり直す必要はないかもしれません。
一方で、「定義域」という言葉の意味が分からず問題文の段階で止まったのであれば、計算練習ではなく、教科書の定義まで戻ります。
基本問題は点数を測るためだけではなく、「問題を解く過程のどこで止まっているのか」を調べるために使うことができます。
間違えた問題から「できない原因」を一段ずつさかのぼる
基本問題を解けなかったら、その単元を丸ごと復習するのではなく、「なぜ解けなかったのか」を確認し、必要なところまで一段ずつさかのぼります。
たとえば数学Ⅱの微分で、三次関数の最大値・最小値を求める問題が解けなかったとします。
ここで「微分が苦手」と判断して、微分を最初から全部やり直す必要があるとは限りません。
どこで止まったのかを確認します。
導関数を求められなかったのであれば、微分計算を復習します。
導関数は求められたものの、「導関数=0」として得られた方程式を解けないのであれば、方程式や因数分解を確認します。
方程式は解けても増減表を作れないのであれば、関数の増減や正負の判断を確認します。
計算はすべてできているのに「極大」「極小」の意味を正しく説明できないのであれば、教科書に戻って用語の意味を確認する必要があります。
このように、
微分の問題が解けない
↓
どこで止まったのか確認する
↓
「極大・極小」の意味が分からない
→ 教科書で用語・定義を確認する方程式が解けない
→ 方程式・因数分解まで戻る問題文から条件を読み取れない
→ 問題文を条件ごとに整理する練習をする
というように、原因によって戻る場所を変えます。
高校数学のやり直しでは、「どこから戻るか」を先に決めるのではなく、できない原因をたどった結果として、戻る場所を決めることが重要です。
答えだけでなく「最初の式や方針を自分で決められるか」を確認する
つまずきを調べるときは、答えが合っているかだけでなく、問題文を読んで「最初に何をするのか」を自分で決められるかを確認します。
たとえば、生徒が二次関数の問題で手を止めたときに、
「ここは平方完成すればいいよ」
と教え、その後は正しく解けたとします。
この場合、平方完成の計算ができることは確認できます。
しかし、「この問題では平方完成を使う」と自分で判断できるかどうかは確認できていません。
同じことは、
「ここは余事象を使う」
「因数定理を使ってみよう」
「これは等比数列として考える」
とヒントを与えた場合にも当てはまります。
高校生を見ていると、解説に書かれていた手順は覚えていても、その解法をどのような問題で使えるのかを把握できていないことがあります。
そのため、
- 問題文を読んで何を求めるのか説明できるか
- 数学用語の意味を理解できているか
- 与えられた条件を自分で整理できるか
- 使えそうな公式や考え方を自分で選べるか
- なぜその解法を使うのか説明できるか
- 最初の式を自分で書けるか
まで確認します。
さらに、同じ問題をもう一度解かせるだけではなく、同じ考え方を使う別の問題でも、自分でその解法を選べるかを見る必要があります。
ここまで確認すると、つまずきの原因を次のように整理できます。
【高校数学でつまずいている原因の確認】
数学用語の意味が分からない
→ 教科書に戻り、用語・定義・基本的な考え方を確認する問題文の意味を読み取れない
→ 与えられた条件と求めるものを整理する練習をする必要な公式・知識を知らない
→ その単元の基礎知識まで戻る公式は知っているが、どこで使うか分からない
→ 問題の特徴と解法を結びつける練習をする方針は立つが途中の計算ができない
→ 計算で必要になった前提単元まで戻る同じ問題なら解けるが、類題になると解けない
→ 解答の手順ではなく、「なぜその解法を使うのか」を確認する
したがって、高校数学をどこからやり直すかを調べるときには、問題集の正答率だけを見てはいけません。
教科書に書かれている数学用語を理解しているか、問題文を数学的な条件として読めるか、その条件から必要な解法を自分で選べるか、そして最後まで計算できるか。
この順番で確認することで、本当につまずいている場所を見つけやすくなります。
高校数学をやり直す順番は?
高校数学をやり直すときは、数学Ⅰの最初から一律に復習するのではなく、「現在の学力を確認する→つまずきの原因まで戻る→基礎を理解する→基本問題を自力で解く→類題で定着を確認する→既習単元をランダムに解く→大学受験で必要なレベルへ進む」という順番が基本です。
特に注意したいのは、いきなり新しい参考書や問題集を買って、最初のページから解き始めないことです。
これまで説明したように、数学ができない原因には、
- 数学用語や定義を理解していない
- 問題文から条件を読み取れない
- 公式や基本事項を覚えていない
- 公式は知っているが、どの問題で使うのか分からない
- 解法は分かるが、途中の計算ができない
- 解説の手順は覚えているが、類題になると解けない
などがあります。
原因が違えば、必要な復習も違います。
さらに、単元ごとの問題を解けるようになっただけでは、学校の定期テストや模試、大学受験の数学で同じように解けるとは限りません。
単元別の問題集では、「今日は二次関数」「今日は数列」と分かった状態で問題を解きます。
しかし、本番のテストでは、どの単元のどの解法を使えばよいのかまで自分で判断しなければなりません。
そのため、単元別の学習が終わったあとには、これまで習った単元の問題をランダムに解く段階も必要です。
高校数学のやり直しでは、「一つの単元を解けるようにすること」と「単元名を教えられなくても、自分で解法を判断できるようにすること」の両方を目標にします。
①現在の学力と苦手単元を確認する
最初にすることは参考書を買うことではなく、現在どの単元の基本問題まで、解説を見ずに自力で解けるかを確認することです。
「数学が苦手」というだけでは、どこから復習すればよいのかは決まりません。
たとえば同じ高校2年生でも、
- 数学ⅠAの基本問題から不安定
- 数学ⅠAは解けるが数学Ⅱで止まっている
- 計算問題は解けるが文章題になると解けない
- 基本問題は解けるが模試では解法を選べない
など、状態は異なります。
まずは、現在苦手だと感じている単元について、教科書の例題や基本問題を何も見ずに解いてみます。
その際には、正解できたかだけを見るのではありません。
数学用語を理解できているか、問題文の条件を読み取れるか、最初の方針を決められるか、必要な公式を選べるか、最後まで計算できるかを確認します。
たとえば数列の問題で手が止まった場合でも、
「一般項という言葉の意味が分からない」
のと、
「一般項の意味は分かるが、どの公式を使えばよいか分からない」
のと、
「使う公式は分かるが、方程式を解けない」
のとでは、必要な勉強が違います。
したがって、この段階では、
【最初に確認すること】
① 数学用語・定義を理解しているか
② 問題文から条件と求めるものを読み取れるか
③ 必要な公式・基本事項を知っているか
④ 最初の式や解法を自分で決められるか
⑤ 最後まで正確に計算できるか
という順番で確認します。
「何点取れたか」だけではなく、「どこから自力で進めなくなったのか」を調べることが、やり直しの出発点です。
②できない原因となっている前提単元まで戻る
苦手な場所が分かったら、その単元を最初から繰り返すのではなく、問題を解けない原因となっている前提知識まで戻ります。
たとえば微分の最大値・最小値の問題が解けないとします。
原因を確認した結果、微分計算はできるものの、導関数から得られた方程式を解けないのであれば、微分を繰り返すより方程式や因数分解を復習します。
二次関数でグラフを理解できないのであれば、一次関数や座標まで戻ることがあります。
三角比で図から必要な辺の関係を読み取れないのであれば、中学数学の相似や三平方の定理まで戻ることもあります。
一方、計算も基本事項も理解できているのに問題文を読めないのであれば、さらに前の計算単元へ戻ることが解決になるとは限りません。
この場合は、数学用語の意味を教科書で確認し、問題文に書かれた条件を式や図に置き換える練習を優先します。
つまり、「戻る」というのは、必ずしも学年をさかのぼることだけではありません。
【原因によって戻る場所を変える】
数学用語・定義が分からない
→ 教科書の説明まで戻る問題文を理解できない
→ 条件と求めるものを整理するところまで戻る公式・基本事項を知らない
→ その単元の基礎まで戻る途中の計算ができない
→ 必要な計算単元まで戻る公式は知っているが使う場面が分からない
→ 問題の特徴と解法の関係を確認する類題になると解けない
→ 解答手順ではなく、解法を選んだ理由まで確認する
このように、「数学Ⅰから」「中学数学から」と一律に決めず、できない原因が見つかったところまで戻ることが、高校数学を効率よくやり直すための基本です。
③基本問題を解説なしで解けるまで練習する
戻るべき内容を確認したら、教科書で数学用語・定義・基本的な考え方を理解したうえで、基本問題を解説なしで解ける状態を目指します。
ここで順番を間違えないことが重要です。
数学用語の意味そのものが分からないのであれば、いきなり問題演習を繰り返すのではなく、まず教科書を読みます。
定義や基本事項を確認したら、教科書の例題などで使い方を確認します。
そのうえで解説を閉じ、何も見ずに問題を解きます。
教科書で用語・定義を確認する
↓
例題で基本的な使い方を理解する
↓
解説を閉じる
↓
基本問題を自力で解く
↓
間違えた原因を確認する
↓
もう一度、何も見ずに解く
という流れです。
特に避けたいのが、
「解けない」
↓
「すぐ解答を見る」
↓
「解説を読んで分かった」
↓
「次の問題へ進む」
という勉強です。
この方法では、解説を理解する練習はできても、自分で問題文を読み、必要な解法を選んで答えを出す練習が不足することがあります。
また、解説を読んだ後にもう一度解く場合も、単に手順を覚えて再現するだけでは十分ではありません。
「なぜこの式を作るのか」
「問題文のどの条件から、この解法を使うと判断したのか」
を確認します。
高校数学の基礎固めでは、「解説を見れば分かる」ではなく、「何も見なくても自分で考え方を選び、基本問題を正解できる」ことを一つの目標にします。
④類題で本当に定着したか確認する
基本問題を一度解けたら、数字や問題文、問われ方が異なる類題でも、同じ考え方を自分で選べるか確認します。
同じ問題を何度も解いていると、問題文を十分に読まなくても解答の手順を覚えて正解できるようになることがあります。
しかし、それだけではその解き方をどのような問題で使えるのか理解できているかは分かりません。
そこで類題を使います。
たとえば確率で余事象を利用する問題を学習したのであれば、同じ数字の問題を繰り返すだけではなく、別の状況で余事象を使う問題を解いてみます。
そのときに、
「『少なくとも』という条件があるから、反対の場合を考えた方が求めやすい」
と自分で判断できるかを確認します。
数列でも、ある問題で使った解法の手順を覚えているかではなく、別の問題を見たときに、
「この条件なら、同じ考え方が使える」
と判断できるかを見ます。
さらに、一度できた問題は少し時間を空けてからもう一度確認します。
私の指導でも、説明した直後に正解できただけでは「できるようになった」とは判断しません。
その後に同じ問題や類題を家庭学習で取り組んでもらい、次の指導時にこちらで問題を選んで、もう一度解いてもらいます。
そこで、
- 問題文を理解できる
- 必要な条件を取り出せる
- 解法を自分で選べる
- 最初の式を自分で立てられる
- 最後まで自力で正解できる
ことを確認します。
「一度解けた」ではなく、「時間が経っても、問題が変わっても、必要な考え方を自分で取り出せる」ことが、復習した内容が定着しているかを判断する重要な基準です。
⑤今までに習った単元の問題をランダムに解く
一つひとつの単元を学習した後は、今までに習った複数の単元から問題をランダムに出して、単元名を知らされなくても自分で解法を判断できるか確認します。
これは、学校のテストや模試、大学入試の出題形式に近づけるために重要な練習です。
単元ごとに問題集を進めていると、実は問題を解く前から大きなヒントを与えられています。
たとえば、
「二次関数 最大・最小」
というページを開いていれば、問題を読む前から「二次関数の最大・最小の考え方を使う」と分かっています。
「数列 漸化式」というページであれば、漸化式を利用して解く問題だと分かった状態で取り組んでいます。
「確率 余事象」の練習ページであれば、余事象を使う可能性が高いことまで分かっています。
しかし、本番のテストではそうではありません。
問題を見たときに、
「これは何の単元の問題なのか」
「どの知識を使うのか」
「どの解法で進めればよいのか」
を自分で判断しなければなりません。
そのため、二次関数を学習したら二次関数だけ、数列を学習したら数列だけを解いて終わりにするのではなく、学習済みの問題を混ぜます。
たとえば、
二次関数
↓
場合の数・確率
↓
数列
↓
三角関数
↓
二次関数
↓
ベクトル
↓
数列
というように、どの単元の問題が次に出てくるか分からない状態を作ります。
ここで確認するのは、単に正答率ではありません。
【ランダム演習で確認すること】
① 問題文から何を求めるのか理解できるか
② どの単元の知識が必要なのか判断できるか
③ 使う公式・解法を自分で選べるか
④ なぜその解法を使うのか説明できるか
⑤ 最初から最後まで自力で解けるか
を確認します。
この練習には、もう一つ大きな意味があります。
以前に習った単元を忘れていないかを継続的に確認できることです。
たとえば数列を学習している間、数列だけを何週間も解いていれば、その期間は二次関数や確率をほとんど使わないことがあります。
数列が終わってから二次関数に戻ったときに、以前できていた問題を解けなくなっていることもあります。
既習単元をランダムに混ぜれば、新しい単元を学びながら、それまでに学習した内容の復習も続けられます。
私は、単元ごとの学習で正解できることに加えて、今まで習った問題をどのような順番で与えられても、自分で「この問題はどう解くのか」を判断して正解できることを重要な到達点として考えます。
これは、本番のテストでも必要になる力です。
学校の定期テストでも、模試でも、大学入試でも、受験生が自由に問題の順番を決めることはできません。
出題された問題を見て、その場で必要な知識を取り出さなければなりません。
したがって、
単元別に解ける
↓
類題でも解ける
↓
既習単元をランダムに出されても解ける
という段階まで進めることで、実際のテストの出題に近い形で「自分で解法を判断する練習」ができたと考えられます。
⑥大学受験で必要な単元・レベルへ進む
基本問題・類題・既習単元のランダム演習まで安定して解けるようになったら、志望大学の入試で必要となる単元と難易度へ段階的に進みます。
高校数学をやり直す目的が大学受験であれば、基礎を復習すること自体が最終目的ではありません。
最終的には、志望校の入試問題で得点できる数学力が必要です。
そのため、全体の流れは次のようになります。
現在の学力を確認する
↓
つまずきの原因まで戻る
↓
教科書で用語・定義・基本事項を理解する
↓
基本問題を自力で解けるようにする
↓
類題で定着を確認する
↓
既習単元をランダムに解く
↓
標準的な入試問題へ進む
↓
志望校で必要なレベルへ進む
ここで注意したいのが、基礎をやり直している途中で、いきなり難しい入試問題に戻らないことです。
一方で、「基礎が不安だから」といつまでも同じ単元の同じレベルの問題だけを繰り返すのも、大学受験を考えると十分ではありません。
単元別の基本問題を解けるようになり、類題でも考え方を再現でき、さらに複数の単元をランダムに出されても自分で解法を選べるようになったら、次のレベルへ進みます。
特に理系大学を目指す場合、入試では一つの問題の中で複数の単元の知識が必要になることもあります。
そのため、「高校数学をどこからやり直すか」だけではなく、「単元ごとの知識を身につけ、それをランダムな出題の中でも自分で選んで使い、最終的に志望校の問題へつなげる」というところまで含めて、学習の順番を考えることが重要です。
大学受験が目的なら、数学を全部やり直すべき?
大学受験が目的であっても、高校数学を最初から最後まで一律に全部やり直す必要があるとは限りません。現在の学力を確認したうえで、志望校の入試で必要な数学から逆算し、優先順位を決めて復習することが重要です。
たとえば高校3年生になって数学に不安を感じ、
「数学ⅠAから全部やり直そう」
と考える高校生もいます。
しかし、すでに自力で解ける内容まで同じように復習すると、本当に時間をかける必要がある単元の学習が遅れてしまいます。
一方で、
「受験まで時間がないから、分からないところは飛ばして入試問題を解こう」
という進め方にも注意が必要です。
前の単元の知識が不足したまま入試問題を繰り返しても、解説を読んで解法を覚える学習になり、自力で解ける問題が増えないことがあります。
そのため、大学受験を目的として高校数学をやり直す場合には、
「全部やり直すか、やり直さないか」ではなく、「志望校で必要な数学のうち、現在の自分に不足している内容は何か」を調べることから始めます。
志望校で必要な数学から逆算して優先順位を決める
大学受験の数学をやり直す場合は、現在できない単元だけを見るのではなく、志望校の入試で必要になる単元・問題の難易度・目標得点から逆算して、復習する内容の優先順位を決めます。
同じ「数学が苦手な高校生」でも、志望校によって必要な数学は異なります。
たとえば、
- 共通テストで数学を使用する
- 私立理系大学の個別試験で数学を使用する
- 国公立大学の二次試験で記述式の数学が必要
- 数学Ⅲまで必要な理系学部を受験する
といった違いがあります。
当然、必要な数学のレベルも同じではありません。
そのため、大学受験のためのやり直しでは、最初に、
【大学受験から逆算して確認すること】
① 志望校では数学のどの範囲が出題されるのか
② どの程度の難易度まで解ける必要があるのか
③ 数学でどの程度の得点を目指すのか
④ 現在、そのレベルに対して何が不足しているのか
⑤ 不足している内容を学ぶために、どの前提単元まで戻る必要があるのか
を確認します。
ここで重要なのが、過去問を「今すぐ合格点を取れるか確認するもの」としてだけ使わないことです。
まだ受験勉強の途中であれば、志望校の過去問を解けないこと自体は不自然ではありません。
それよりも、
「どの単元が出題されているのか」
「基本問題を解けるだけでは足りないのか」
「複数の単元を組み合わせて考える必要があるのか」
「途中式や論証をどこまで書く必要があるのか」
などを確認し、最終的にどの程度の数学力が必要になるのかを把握する材料として利用します。
その到達点と現在の学力を比べれば、何を優先してやり直すべきかが見えやすくなります。
たとえば数列の入試問題が解けなかったとしても、すぐに難しい数列の問題集へ進むとは限りません。
基本的な数列の問題でも一般項や和を求められないのであれば、まずそこまで戻ります。
さらに、その原因が方程式や指数計算にあるなら、必要に応じてその内容まで戻ります。
反対に、基本問題を問題なく解けるのであれば、基礎を最初から何周もするより、標準的な入試問題へ進んだ方がよい場合があります。
大学受験のやり直しでは、「高校数学を全部復習してから受験勉強を始める」のではなく、志望校までの不足部分を見つけ、その不足を埋めるために必要なところまで戻るという考え方が大切です。
高1・高2なら学校の進度とやり直しをどう両立する?
高1・高2で数学をやり直す場合は、学校で現在習っている内容を止めて過去の復習だけをするのではなく、「学校の学習」と「つまずいている前提単元の復習」を並行して進めることが基本です。
数学が分からなくなってくると、
「一度、学校の勉強を置いて、中学数学や数学Ⅰから全部やり直した方がよいのではないか」
と考えることがあります。
しかし学校の授業はその間も進みます。
過去の内容だけを数か月勉強していると、その間に学校で新しく習った単元まで分からなくなり、復習しなければならない範囲がさらに増える可能性があります。
そのため、まずは学校で現在扱っている単元について、
「今の単元を理解するために、過去のどの知識が必要なのか」
を確認します。
たとえば数学Ⅱの三角関数でつまずいているのであれば、数学Ⅰの三角比を確認します。
三角比でも止まるのであれば、必要に応じて相似や三平方の定理まで戻ります。
数列を学習していて式の処理で止まるのであれば、数列をいったんすべて中断するのではなく、文字式や方程式など不足している部分を並行して復習します。
イメージとしては、
学校で現在習っている単元を学習する
+
その単元を理解するために必要な過去の内容を復習する
という進め方です。
高1・高2には、もう一つ確認してほしいことがあります。
それは、以前に習った単元をそのままにしないことです。
学校の授業は基本的に新しい単元へ進んでいくため、以前の単元を自分で復習しなければ、数か月間まったく解かないこともあります。
そこで前のセクションで説明したように、新しい単元の学習と並行して、これまでに習った単元から問題をランダムに解く時間を作ります。
たとえば数学Ⅱを学習している高校2年生でも、
- 二次関数
- 場合の数・確率
- 三角比
- 図形と方程式
- 三角関数
など、すでに学習した内容から基本問題を混ぜて解きます。
これによって、
「以前できた単元を忘れていないか」
だけでなく、
「単元名を教えられなくても、問題を見て自分で解法を判断できるか」
も確認できます。
高1・高2の段階でこの学習を続けておけば、高3になってから数学ⅠA・ⅡBCをすべて一から復習し直す範囲を減らすことにもつながります。
高1・高2のやり直しでは、「過去に戻る勉強」と「現在の学校の勉強」を別々に考えず、現在の学習に必要な前提知識を補いながら、既習単元の復習も続けることが重要です。
高3から高校数学をやり直しても間に合う?
高3からでも高校数学をやり直すことはできますが、「間に合うかどうか」は現在の学力、志望校で必要な数学のレベル、入試までに使える学習時間によって変わります。
そのため、
「高3からでも必ず間に合います」
とも、
「高3からでは遅いです」
とも一律にはいえません。
たとえば同じ高3でも、
- 数学ⅠAの教科書レベルから理解できていない
- 基本問題は解けるが模試になると得点できない
- 数学ⅠA・ⅡBCはできるが数学Ⅲが弱い
- 共通テストが中心
- 国公立大学の二次試験まで数学が必要
- 難関私立理系の数学が必要
では、入試までに必要な学習量が大きく異なります。
だからこそ、高3で高校数学をどこからやり直すかを考える場合には、最初から全範囲をやり直すのではなく、優先順位を明確にする必要があります。
まず、志望校の数学で必要になる範囲と難易度を確認します。
次に、教科書の例題や基本問題などを使って、現在どこまで自力で解けるかを確認します。
そして、
志望校で必要な数学
と
現在、自力で解ける数学
の間に何が不足しているのかを確認します。
そのうえで、不足している内容の中でも、後の単元を学ぶために必要になる基礎から優先してやり直します。
たとえば数学Ⅲの微分・積分を入試で使うのに、数学Ⅱまでの関数や微分・積分が不安定であれば、そこを後回しにはできません。
一方で、すでに基本問題を自力で解ける単元まで、教科書の最初からすべてやり直す必要はありません。
高3では時間に限りがあるため、
「できる内容を何度も復習すること」よりも、「志望校で必要なのに、現在できていない内容を特定して埋めること」
の重要性が高くなります。
また、基礎をやり直している期間も、受験で必要な数学とのつながりを意識します。
基本問題を自力で解けるようになったら類題へ進み、さらに既習単元をランダムに出して解法を判断できるか確認し、その後は標準的な入試問題、志望校レベルの問題へと段階的に進みます。
高3からのやり直しで避けたいのは、
「基礎が不安だから、とりあえず数学ⅠAの最初から全部やる」
と決めてしまい、受験までに必要な内容を終えられなくなることです。
反対に、焦って過去問や難しい問題だけを解き、解説を覚える学習を繰り返すことにも注意が必要です。
高3から数学をやり直す場合ほど、「現在地を確認する→志望校で必要な到達点を確認する→その間にある不足を特定する→必要な前提知識まで戻る」という順番で、学習範囲を絞ることが重要です。
高校数学のやり直しに参考書や問題集は何を使う?
高校数学をやり直すときは、最初から難しい参考書や大学受験用の問題集を使う必要はありません。
まずは学校の教科書を使って数学用語・定義・基本的な考え方を確認し、そのうえで自力で解けるレベルの問題集を使うことが基本です。
「高校数学をやり直したい」と考えると、新しい参考書や問題集を探したくなるかもしれません。
しかし、これまで説明してきたように、数学が苦手になっている原因は生徒によって異なります。
数学用語そのものを理解していない生徒もいれば、公式は知っているものの使い方が分からない生徒もいます。
基本問題は解けても、複数の単元からランダムに問題を出されると、どの解法を使えばよいのか判断できない生徒もいます。
そのため、教材を選ぶときに重要なのは、「評判のよい参考書か」だけではありません。
現在の自分が、その教材を使って「解説を見ずに正解を出す練習」ができるかを確認する必要があります。
最初は難しい参考書より教科書レベルを優先する
高校数学の基礎からやり直す場合は、難しい受験用参考書へ進む前に、学校の教科書に書かれている数学用語・定義・公式・基本例題を理解できているか確認します。
特に、
- 数学用語の意味を説明できない
- 問題文に書かれている条件を読み取れない
- 公式は覚えているが何を表しているのか分からない
- 基本的な例題でも最初の式を立てられない
という状態であれば、まず教科書に戻ることをおすすめします。
高校生を指導していると、学校の問題集や市販の参考書には取り組んでいても、教科書の説明部分をほとんど読んでいないことがあります。
しかし教科書には、その単元を学習するために必要な、
- 新しく登場する数学用語
- 定義
- 公式
- 基本的な考え方
- 代表的な例題
などが順番に書かれています。
たとえば「判別式」という言葉を見たことがあっても、
「判別式によって何を判断できるのか」
を理解していなければ、問題文の条件と判別式を結びつけることができません。
「一般項」という言葉を覚えていても、それが何を表す式なのか分からなければ、数列の問題文を正しく理解できません。
このような状態で受験用の問題集を何周しても、
「この形の問題なら、この公式」
という解答手順の暗記になってしまうことがあります。
そのため、基礎からやり直す場合には、
教科書の本文を読む
↓
数学用語・定義・公式の意味を確認する
↓
教科書の例題で使い方を確認する
↓
何も見ずに基本問題を解く
という順番で進めます。
ただし、「教科書レベルからやり直す」といっても、数学Ⅰの最初のページからすべて読み直す必要があるとは限りません。
前のセクションまでで説明した方法を使って、つまずいている原因を調べ、必要な単元の必要なところまで戻って教科書を確認するという使い方をします。
参考書を読むだけでなく問題を解いて確認する
参考書や教科書を読んで「分かった」と感じたら、必ず解説を閉じて問題を解き、本当に自力で解法を選べるか確認します。
数学の参考書には、問題の考え方や解法が詳しく説明されています。
そのため、解説を読んでいると、
「これは分かる」
「この公式も知っている」
「この解き方ならできそう」
と感じることがあります。
しかし、解説を理解できることと、自分で問題を解けることは同じではありません。
特に注意したいのが、解説の手順そのものを覚えてしまう勉強です。
たとえば、
「この問題では、最初にこの式を変形して、次にこの公式を使う」
という手順を覚えれば、同じ問題は解けるようになるかもしれません。
しかし、数字や問題文が変わったときに、
「この問題でも同じ考え方が使える」
と判断できなければ、大学受験の数学には対応しにくくなります。
そこで、参考書や問題集を使うときは、
【参考書・問題集を使った確認】
① 解説を読んで考え方を理解する
② 解説を閉じる
③ 問題文を最初から読み直す
④ 何を求めるのか、どの条件を使うのか考える
⑤ 必要な公式・解法を自分で選ぶ
⑥ 最初の式から最後の答えまで自力で解く
⑦ 類題でも同じ考え方を自分で選べるか確認する
というところまで行います。
間違えた場合も、すぐに解説を全部読み直すのではなく、
「問題文を理解できなかったのか」
「公式を忘れていたのか」
「公式は知っていたが使うことに気づかなかったのか」
「途中の計算で間違えたのか」
を確認します。
参考書は「読むための教材」、問題集は「答えを埋めるための教材」と考えるのではなく、自分がどこまで一人で考えられるかを確認するために使うことが重要です。
さらに、一つの単元を学習した後は、その単元だけを繰り返して終わりにしません。
これまでに習った単元の問題も混ぜて、ランダムに出題された状態で解法を選べるかを確認します。
問題集の「二次関数」というページを開いていれば、二次関数を使うこと自体がヒントになります。
しかし、模試や大学入試ではそのようなヒントはありません。
複数の単元から問題をランダムに解くことで、
「これは何の単元の問題なのか」「どの知識を使えばよいのか」を自分で判断する練習につながります。
教材を何冊も増やす必要はある?
高校数学をやり直す段階では、教材を何冊も増やすより、現在使っている教科書と自分のレベルに合った問題集を、解説なしで解ける状態まで使うことを優先します。
数学が伸びないと、
「今の参考書が合っていないのではないか」
「もっと分かりやすい問題集があるのではないか」
と考え、新しい教材を探したくなることがあります。
もちろん、現在使っている教材が難しすぎる場合には、教材を変えた方がよいこともあります。
しかし、教材を変える前に確認したいのが、
「その教材の問題を、本当に自力で解けるところまで練習したか」
という点です。
たとえば問題集を1周したとしても、
- 解説を見ながら解いた
- 分からない問題は答えを写した
- 解説を読んで納得しただけで終わった
- 間違えた問題を後日解き直していない
- 類題で確認していない
という状態であれば、その教材を「終えた」とは考えにくいでしょう。
新しい問題集へ進むより、まず間違えた問題をもう一度何も見ずに解きます。
さらに数字や条件が変わった類題を解き、同じ解法を自分で選べるか確認します。
そのうえで、既習単元からランダムに問題を出しても解けるかを確認します。
【教材を増やす前に確認すること】
教科書の数学用語・定義を理解している
↓
基本問題を解説なしで解ける
↓
間違えた問題を後日もう一度解ける
↓
類題でも必要な解法を選べる
↓
既習単元をランダムに出されても解法を判断できる
↓
できるようになったら次のレベルの教材へ進む
この順番で進めれば、教材を何冊こなしたかではなく、一冊の教材からどれだけ自力で解ける問題を増やせたかを基準にできます。
また、大学受験が目的であれば、最終的には志望校で必要な難易度まで教材のレベルを上げる必要があります。
教科書レベルの問題を自力で解けるようになったら、標準的な入試問題へ進み、その後に志望校の出題レベルへ進みます。
したがって、「一冊だけを永久に繰り返せばよい」という意味ではありません。
現在の教材を自力で解けるようになる前に次々と教材を増やすのではなく、一つのレベルを身につけたことを確認してから、次のレベルへ進むことが大切です。
高校数学のやり直しで教材を選ぶときは、「どの参考書が一番よいか」よりも、「今の自分が何も見ずに正解を出す練習ができる難易度か」を基準に選ぶとよいでしょう。
高校数学のやり直しは独学でもできる?
高校数学のやり直しは独学でも可能です。ただし、自分がどこでつまずいているのかを特定し、必要なところまで戻り、理解できた内容を自力で解けるようになったか確認できることが条件になります。
教科書や参考書、問題集があれば、一人でも数学を勉強することはできます。
しかし、高校数学をやり直す場合に難しいのは、「勉強すること」そのものより、
「自分はなぜこの問題を解けないのか」
を自分で判断することです。
たとえば二次関数の問題が解けないときに、
「二次関数が苦手だから、二次関数を復習しよう」
と考えるだけでは、本当の原因が分からないことがあります。
実際には、
- 数学用語の意味を理解していない
- 問題文から条件を読み取れていない
- 平方完成ができない
- 方程式・不等式が不安定
- グラフの意味を理解していない
- 解説の解法は覚えているが、自分ではその解法を選べない
など、さまざまな原因が考えられます。
独学ができるかどうかは、「一人で参考書を読めるか」だけではなく、「できない原因を見つけ、自分に必要な学習へ修正できるか」で考える必要があります。
自分でつまずきの原因を特定できるなら独学も可能
問題を解けなかったときに、「どこで止まったのか」「何が分からなかったのか」を自分で確認できる高校生であれば、独学で高校数学をやり直すことも十分可能です。
たとえば問題を間違えたときに、
「公式を忘れていた」
「問題文のこの条件を読み取れていなかった」
「使う公式は知っていたが、この問題で使うことに気づかなかった」
「解法は分かっていたが、因数分解で間違えた」
といったように、原因を具体的に説明できるのであれば、その後の復習内容も決めやすくなります。
因数分解が原因なら因数分解へ戻る。
数学用語が分からなければ教科書へ戻る。
公式の使いどころが分からなければ、その公式を使う問題の特徴を整理する。
このように、自分で学習内容を修正できます。
独学でやり直す場合には、
① 基本問題を何も見ずに解く
↓
② どこで解けなくなったのか確認する
↓
③ 必要なら前提単元や教科書の説明まで戻る
↓
④ 解説を閉じて、もう一度自力で解く
↓
⑤ 類題でも同じ考え方を使えるか確認する
↓
⑥ 数日後にも解けるか確認する
↓
⑦ 既習単元をランダムに解いて、解法を自分で選べるか確認する
という流れで進めるとよいでしょう。
特に重要なのが、⑤以降です。
一つの単元を勉強している最中は、使う知識をある程度予想できます。
「二次関数」のページを開いていれば二次関数を使うと分かりますし、「数列」のページを開いていれば数列の知識を使うと分かります。
しかし、実際のテストではそうではありません。
問題をどのような順番で出されても、問題文から必要な知識や解法を自分で判断できるところまで確認することが必要です。
この確認まで自分で行えるのであれば、独学でも学習を進めやすくなります。
予備校や学校の授業についていけない場合はどうする?
予備校や学校の数学についていけない場合は、授業をさらに多く受ける前に、「現在の授業を理解するために不足している前提知識は何か」を確認することが先です。
高校数学は、以前に習った内容を前提として新しい内容が進んでいきます。
たとえば数学Ⅱの微分を学習するときにも、関数、方程式、因数分解などの知識を使います。
数学Ⅲへ進めば、数学Ⅰ・Ⅱで学んだ関数や三角関数、指数・対数関数、微分・積分などが前提になります。
そのため、以前の内容に大きな抜けがある状態では、現在の授業だけを一生懸命聞いても理解できないことがあります。
このような場合に、
「授業についていけないから、もっと詳しい講義動画を見る」
「別の予備校の授業も受ける」
「もっと分かりやすい参考書を読む」
と、説明を受ける量だけを増やしても解決しないことがあります。
必要なのは、現在の授業で分からない内容と、その原因となっている過去の内容を分けて考えることです。
たとえば現在「数列」が分からないのであれば、
「数列の公式を知らないのか」
「公式は知っているが問題文を理解できないのか」
「文字を使った式の処理ができないのか」
「方程式を解くところで止まっているのか」
まで確認します。
もし方程式で止まっているのであれば、数列の授業を何度聞いても、途中で同じところにつまずく可能性があります。
その場合は、数列の学習と並行して、必要な方程式の復習を行います。
また、授業についていけない高校生ほど、授業を聞いて「分かった」ことを学習のゴールにしないことも大切です。
授業後に、
何も見ずに基本問題を解けるか
を必ず確認します。
先生の説明を聞いているときには理解できても、自分一人になると最初の式を書けないのであれば、まだ自力で解ける状態にはなっていません。
学校や予備校の授業についていけない場合は、「もっと授業を受ける」ことより、「どの前提知識で止まっているのか」を調べて補うことを優先します。
自分で「どこから戻るか」を判断できない場合は?
自分で「高校数学をどこからやり直すべきか」を判断できない場合は、第三者に実際の解き方を見てもらい、つまずいている場所を具体的に確認してもらう方法があります。
数学が苦手な高校生にとって難しいのは、自分が理解できていないことを、自分自身で正確に見つけることです。
本人は、
「微分が分からない」
と思っていても、実際に問題を解いてもらうと因数分解で止まっていることがあります。
「確率が分からない」と思っていても、実際には問題文の「少なくとも」「同時に」「互いに排反」といった言葉を正しく理解できていない場合もあります。
また、
「解説を読めば分かるから、もう大丈夫」
と思っていても、類題を出すと自分で解法を選べないことがあります。
このような場合には、答えが合っているかを見るだけではなく、問題を解いている途中の考え方まで確認することが必要です。
たとえば私が高校生の数学を見る場合も、
「この問題は何を求める問題?」
「この言葉はどういう意味?」
「ここまでの条件から何が分かる?」
「最初に何をすればいいと思う?」
「なぜこの公式を使うの?」
「ここから先に進めないのはなぜ?」
と確認しながら、どこで考え方が止まっているのかを見ます。
そこで数学用語を理解していないことが分かれば教科書の説明まで戻ります。
問題文を読めていなければ、条件を一つずつ整理します。
計算が原因なら、その計算を学習した単元まで戻ります。
必要な内容を理解できたら、その直後にもう一度問題を解いてもらいます。
さらに、同じ問題や類題を家庭学習で解き、次の指導時にはその中からこちらで問題を選んでもう一度確認します。
ここで見るのは、答えだけではありません。
問題文を読んで、自分で必要な考え方を取り出し、式を立て、最後まで解けるかを確認します。
さらに既習単元の問題もランダムに出し、単元名が分からない状態でも必要な解法を選べるかを見ます。
ここまでできれば、その内容については「自力で使える状態になってきた」と判断できます。
反対に、説明を受けた直後だけ正解できても、数日後や類題、ランダムな出題で解けなければ、まだ復習が必要です。
そのため、数学が苦手な高校生が高校数学のやり直しをどこから始めればよいか分からない場合には、単に「数学Ⅰからやり直しましょう」と決めるのではなく、実際に問題を解きながら、
数学用語・定義
↓
問題文の理解
↓
必要な知識の選択
↓
解法の判断
↓
式を立てる
↓
計算する
↓
類題で再現する
↓
ランダムな出題でも解法を選ぶ
のどこで止まっているのかを確認することが重要です。
独学で大切なのは「一人で勉強すること」そのものではなく、自分の間違いを分析し、必要な学習へ戻り、できるようになったかまで自分で確認できることです。
それが難しい場合には、つまずきの原因を一緒に特定してもらうことも、高校数学をやり直す方法の一つです。
【学年別】高校数学をやり直す手順
高校数学のやり直し方は、高1・高2・高3で変える必要があります。学年が上がるほど大学受験までの残り時間が短くなるため、「どこまで戻るか」だけでなく、「何を優先して、いつまでにどこまで進むか」も考える必要があります。
ただし、学年が違っても基本的な考え方は共通しています。
① 現在どこまで自力で解けるか確認する
↓
② 解けない原因を調べる
↓
③ 必要な前提単元まで戻る
↓
④ 教科書で数学用語・定義・基本事項を確認する
↓
⑤ 基本問題を何も見ずに解けるようにする
↓
⑥ 類題で定着を確認する
↓
⑦ 既習単元をランダムに解く
↓
⑧ 大学受験で必要なレベルへ進む
違うのは、この中のどこにどれだけ時間を使えるかです。
高1であれば、必要に応じて中学数学まで戻ってじっくり基礎を作り直す時間があります。
高2になると、基礎のやり直しと並行して、大学受験を意識した学習も始めたい時期です。
高3では、志望校と現在の学力から優先順位をつけ、必要な内容に絞ってやり直す必要があります。
高1の数学のやり直し|中学数学のつまずきまで確認する
高1で数学が苦手になっている場合は、高校数学だけを見るのではなく、中学数学の計算・方程式・関数・図形などに抜けがないか確認するところから始めます。
高校1年生の場合、
「高校に入って急に数学が難しくなった」
と感じることがあります。
しかし、実際に問題を解いてもらうと、高校数学そのものではなく、中学数学の内容で止まっている場合があります。
たとえば数学Ⅰの二次関数でつまずいていても、その原因が、
- 文字式の計算
- 展開
- 因数分解
- 平方根
- 一次方程式・二次方程式
- 一次関数
- 座標
などにあることがあります。
この場合、二次関数の問題集だけを何度も繰り返しても、途中の計算で毎回止まってしまいます。
高1であれば、必要に応じて中学数学まで戻り、高校数学を学ぶための前提を作り直すことを考えてよいでしょう。
ただし、中学数学3年間を最初から全部やり直す必要があるとは限りません。
数学Ⅰの基本問題を解き、
「どこで止まるのか」
を確認します。
たとえば、
二次関数が解けない
↓
平方完成ができない
↓
展開・因数分解も不安定
↓
中学数学の文字式・展開・因数分解を復習する
というように、必要なところまで戻ります。
そして、高1で特に意識してほしいのが、学校で現在習っている内容を完全に止めないことです。
過去の復習だけを何か月も続けている間にも、学校の授業は進みます。
そのため、
「学校で現在習っている数学」+「その内容を理解するために必要な過去の復習」
を並行して進めます。
さらに、学習した単元はそのままにせず、既習単元から問題をランダムに出して復習します。
高1のうちから、
「二次関数のページだから二次関数を使う」
のではなく、
問題を読んで自分で使う知識を判断する練習
をしておくことが重要です。
高1は、苦手な数学を「分からないまま先へ進む」のではなく、必要なら中学数学まで戻って高校数学の基礎を作り直しやすい時期です。
高2の数学のやり直し|数学ⅠAの抜けを補いながら現在の学習を進める
高2で高校数学をやり直す場合は、数学ⅠAなどの既習範囲の弱点を補いながら、学校で現在学んでいる数学ⅡBCなども並行して進めます。
高2になると、高1までに学習した内容が増えています。
さらに理系であれば、この先の数学Ⅲにもつながっていきます。
そのため、高2で数学が苦手になっている場合に、
「一度全部止めて数学Ⅰの最初からやり直す」
という方法を取ると、現在の学校の授業との差がさらに広がる可能性があります。
まず、数学ⅠAの基本問題を使って、どこに抜けがあるのかを確認します。
特に、
- 数と式
- 方程式・不等式
- 二次関数
- 場合の数・確率
- 三角比
など、今後の数学でも使う内容が不安定であれば、優先的に復習します。
同時に、現在学校で習っている単元についても、
「この単元を理解するために、過去の何が必要なのか」
を確認します。
たとえば三角関数が分からないのであれば三角比を確認する。
微分で方程式を解けないのであれば、方程式や因数分解を確認する。
このように、現在の単元から原因をさかのぼる形で復習すると、戻る範囲を絞りやすくなります。
また、高2では大学受験を意識した基礎固めも始めたいところです。
一つの単元を復習したら、
基本問題を解く
↓
類題を解く
↓
数日後にもう一度確認する
↓
数学ⅠA・ⅡBCの既習単元からランダムに問題を解く
という学習を続けます。
ランダム演習を行うことで、以前に学んだ内容を忘れていないか確認するとともに、単元名を知らされなくても問題文から解法を判断する練習ができます。
高3になってから数学ⅠA・ⅡBCをすべて復習し直すのではなく、高2の段階から既習単元を維持しておくことが重要です。
高2のやり直しでは、「過去の復習」「現在の学校の学習」「大学受験に向けた既習単元の維持」の3つを並行して進めることがポイントです。
高3の数学のやり直し|志望校から逆算して必要な単元を優先する
高3で高校数学をやり直す場合は、数学ⅠAから一律に全部復習するのではなく、志望校の出題範囲と現在の学力を比較して、優先順位を決める必要があります。
高3では、入試までに使える時間が限られています。
そのため、
「数学が苦手だから、とりあえず数学Ⅰの最初から全部やる」
という方法が適しているとは限りません。
まず確認したいのは、
① 志望校で数学のどの範囲が必要か
② どの程度の問題まで解ける必要があるか
③ 現在、どの単元の基本問題まで自力で解けるか
④ 志望校のレベルまでに何が不足しているか
⑤ その不足を補うために、どの前提単元まで戻る必要があるか
です。
たとえば理系で数学Ⅲまで必要なのに、数学Ⅱの微分・積分の基本が不安定なのであれば、優先して復習する必要があります。
一方、数学ⅠAの中でも基本問題を問題なく解ける単元まで、すべて最初からやり直す必要はありません。
できる単元とできない単元を分け、受験に必要で、なおかつ現在できていない内容を優先します。
高3の場合も、基本問題を解けるようになっただけで終わりではありません。
必要な基礎まで戻る
↓
教科書・参考書で理解する
↓
基本問題を自力で解く
↓
類題で確認する
↓
既習単元をランダムに解く
↓
標準的な入試問題を解く
↓
志望校レベルの問題・過去問へ進む
というところまでつなげます。
特に高3では、「基礎をやり直す期間」と「入試問題を解く期間」を完全に分けないことも重要です。
ある単元の基礎が身についたら、その単元については次のレベルへ進みます。
別の単元では基礎に戻る。
このように、単元ごとに学習段階が違っていても構いません。
たとえば、
「二次関数は入試問題」
「数列は基本問題」
「微分・積分は教科書まで戻る」
という状態もあり得ます。
すべての単元の基礎が完璧になるまで入試問題を始めない、と考える必要はありません。
高3では「高校数学を全部やり直してから受験数学へ進む」のではなく、単元ごとに現在地を確認し、基礎ができたものから入試レベルへ進めることが重要です。
学年に関係なく「できるようになったか」の確認方法は同じ
高1・高2・高3でやり直しの優先順位は変わりますが、「その単元が本当にできるようになったか」を判断する基準は基本的に同じです。
一度説明を聞いて正解できただけでは、十分とはいえません。
確認したいのは、
- 数学用語の意味を理解している
- 問題文から条件を読み取れる
- 何を求める問題なのか分かる
- 必要な公式や考え方を自分で選べる
- 最初の式を自分で立てられる
- 最後まで自力で解ける
- 数字や条件が変わった類題でも解ける
- 数日後にも解ける
- 複数の単元からランダムに出されても、自分で解法を判断できる
という状態です。
特に最後のランダム演習は重要です。
単元別の問題集では、どの知識を使うのかがある程度分かった状態で問題を解いています。
一方、学校のテストや模試、大学入試では、どの単元の問題がどの順番で出題されるのかを受験生が決めることはできません。
問題を見て、
「何を使う問題なのか」
「最初に何をすればよいのか」
を自分で判断する必要があります。
そのため、学年にかかわらず、
単元別に解ける→類題でも解ける→既習単元をランダムに出されても解ける
というところまで確認することをおすすめします。
高校数学のやり直しをどこから始めるかは学年だけでは決まりませんが、高1は前提知識を作り直す時間を取りやすく、高2は復習と現在の学習を並行し、高3は志望校から逆算して優先順位をつける、という違いを意識すると学習計画を立てやすくなります。
高校数学のやり直しでよくある質問
Q1. 高校数学は数学Ⅰの最初から全部やり直した方がいい?
数学Ⅰの最初から全部やり直す必要があるとは限りません。まず基本問題を何も見ずに解き、「問題文の理解」「解法の判断」「式を立てる」「計算」のどこで止まるのかを確認しましょう。
たとえば二次関数が苦手でも、原因が因数分解にあるなら、因数分解まで戻ればよい場合があります。
反対に、数学用語や定義そのものが分からないのであれば、問題集を繰り返すより、教科書の該当箇所まで戻って基本事項を確認することが必要です。
「高校数学をどこからやり直すか」は学年ではなく、現在解けない原因から決めます。
Q2. 中学数学まで戻ってやり直した方がいい?
高校数学の問題を解けない原因が中学数学にある場合は、必要な単元まで戻って復習した方がよいでしょう。
たとえば、
- 文字式の計算
- 展開・因数分解
- 方程式
- 平方根
- 一次関数
- 相似
- 三平方の定理
などは、高校数学でも使います。
ただし、中学数学3年間を最初からすべてやり直す必要があるとは限りません。
高校数学の問題を実際に解き、
「ここから計算できない」
「この図形の関係が分からない」
というところから原因をさかのぼります。
高校数学を解くために必要な中学数学まで戻り、そこが自力で解けるようになったら高校数学へ戻るという進め方がおすすめです。
Q3. 高校数学のやり直しにはどれくらいの期間が必要?
必要な期間は、現在の学力・戻る範囲・志望校で必要な数学のレベルによって変わります。
たとえば一つの単元の計算だけが不安定な高校生と、中学数学の計算からやり直す必要がある高校生では、必要な学習量が違います。
また、大学受験が目的なら「基礎が全部終わるまで入試問題を解かない」と考える必要もありません。
単元ごとに、
基本事項を理解する→基本問題を自力で解く→類題を解く→ランダムな出題でも解法を選べる
というところまで進んだら、その単元については次のレベルへ進みます。
そのため、最初に「何か月で全部終わらせる」と決めるより、現在の学力と志望校の数学との差を確認して、必要な学習量を見積もることが重要です。
Q4. 高校数学をやり直すなら教科書と参考書のどちらを使えばいい?
数学用語・定義・基本的な考え方から不安がある場合は、まず教科書を使うことをおすすめします。
高校生を見ていると、問題集や参考書には取り組んでいても、学校の教科書の本文をほとんど読んでいないことがあります。
しかし、問題文を理解するためには、
「定義域とは何か」
「排反とは何か」
「一般項とは何か」
といった数学用語の意味と使い方を理解しておく必要があります。
教科書で基本事項を確認したら、問題集を使って、何も見ずに解けるか確認します。
教科書で理解し、問題集で自力で使えるか確認する、というように役割を分けるとよいでしょう。
Q5. 高校数学は独学でもやり直せる?
自分でつまずいている原因を特定し、必要な内容まで戻れるのであれば、独学でもやり直すことは可能です。
ただし、
「二次関数が苦手」
「数列が分からない」
と単元名だけで判断するのではなく、
「数学用語が分からないのか」
「問題文を読み取れないのか」
「使う公式を選べないのか」
「途中の計算ができないのか」
まで確認する必要があります。
また、解説を読んで理解しただけで終わらず、解説を閉じて自力で解き、類題や既習単元のランダム演習でも解法を選べるか確認することが大切です。
自分では「なぜ解けないのか」を判断できない場合には、実際に問題を解く過程を第三者に見てもらい、つまずいている場所を特定してもらう方法もあります。
Q6. 高3から高校数学をやり直しても大学受験に間に合う?
高3からでもやり直すことはできますが、間に合うかどうかは現在の学力・志望校・必要な数学の範囲によって変わります。
高3の場合は、数学Ⅰから一律にすべてやり直すのではなく、
志望校で必要な数学
↓
現在自力で解ける数学
↓
その間に不足している内容
という順番で確認することが重要です。
たとえば数学Ⅲが必要なのに、数学Ⅱの微分・積分でつまずいているなら、そこを優先して戻ります。
一方、すでに自力で解ける数学ⅠAの単元まで、すべて最初からやり直す必要はありません。
高3ほど、志望校から逆算して「必要なのにできていない内容」を優先することが重要です。
まとめ:高校数学は「学年」ではなく「つまずいた原因」まで戻ってやり直す
高校数学をどこからやり直すか迷ったら、「数学Ⅰから」「中学数学から」と学年だけで決めるのではなく、実際に問題を解いて、どこで自力で進めなくなるのかを確認することから始めましょう。
この記事のポイントを整理すると、次のようになります。
- 数学用語・定義、問題文の理解、解法の判断、式を立てる、計算のどこでつまずいているかを確認する
- 解けない原因が見つかったら、その原因となっている前提単元まで戻る
- 教科書で基本事項を確認した後、解説なしで基本問題・類題を解けるところまで練習する
- 既習単元をランダムに出題し、問題の順番が変わっても自分で解法を判断できるか確認する
- 大学受験が目的なら、志望校で必要な数学から逆算して復習の優先順位を決める
特に大切なのは、「解説を読んで分かった」ことを、やり直しの終了地点にしないことです。
実際のテストでは、隣に「この問題は二次関数です」「ここでは余事象を使います」「この問題は漸化式を使います」と書かれているわけではありません。
問題文を読み、
「何を求めるのか」
「どの条件が使えるのか」
「どの単元の知識が必要なのか」
「どの解法を使えばよいのか」
を自分で判断する必要があります。
そのため、
教科書で数学用語・定義を理解する
↓
基本問題を自力で解く
↓
類題でも解けるか確認する
↓
時間を空けても解けるか確認する
↓
既習単元をランダムに出されても解法を選べるか確認する
↓
大学受験で必要なレベルへ進む
という順番で進めていきます。
高1であれば、必要に応じて中学数学まで戻って前提知識を作り直す時間があります。
高2であれば、過去の復習と現在学校で習っている数学を並行して進め、既習単元を忘れないようにします。
高3であれば、志望校の出題範囲と現在の学力を比較し、受験に必要な内容から優先してやり直します。
高校数学のやり直しで重要なのは、「何年生の内容まで戻ったか」ではなく、以前できなかった問題を、自分で問題文を読み、必要な考え方を選び、何も見ずに正解できるようになったかです。
もし本人だけでは、
「どこでつまずいているのか分からない」
「参考書の解説は理解できるのに、一人では問題を解けない」
「数学Ⅰから全部やり直すべきなのか判断できない」
という状態であれば、まず実際に問題を解き、どの段階で考え方が止まっているのかを確認することから始めてください。
私の数学指導でも、単に解き方を教えるのではなく、問題を実際に解いてもらい、数学用語の理解、問題文の読み取り、解法の選択、式の立て方、計算のどこにつまずきがあるのかを確認したうえで、必要な内容まで戻って指導しています。
「高校数学をどこからやり直せばよいか分からない」という場合は、現在の学力とつまずいている原因を整理するところから、個別にご相談いただけます。


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