「MARCHの理系を目指したいけれど、数学はどの参考書を使えばいいのだろう」
「青チャートはどこまで解ければいい?」
「数学が苦手でも、MARCHの理工学部を目指せる?」
このような疑問を持つ受験生は少なくありません。
さらに、MARCHを第一志望にする場合だけでなく、
- 早稲田の理工系学部を第一志望にして、MARCHを併願する
- 横浜国立大学や筑波大学などの国公立大学を第一志望にして、MARCHを併願する
という受験の仕方もあります。
この場合、「MARCH理系を受験するから、この参考書を順番にやればいい」と一律に考えることはおすすめできません。
同じMARCHでも、大学や学部によって数学の入試問題の出題傾向は異なります。
また、MARCHを第一志望にするのか、さらに上の大学を第一志望にするのかによっても、必要な数学の勉強は変わります。
私はこれまで数学専門の家庭教師として、大学受験生を含む200名以上の生徒を指導してきました。
その経験からも、参考書をたくさん終わらせることより、
「今、どのレベルの問題まで自力で解けるのか」
「第一志望の入試問題を解くために、何が足りていないのか」
を確認しながら勉強することが重要だと考えています。
実際に私が高校3年生から受験まで担当した生徒には、横浜国立大学理工学部を第一志望としながら、明治大学と東京理科大学理学部に合格した生徒もいます。
この生徒の場合も、直前期に「MARCH向け」とされる参考書を最初から進めたわけではありません。
第一志望である横浜国立大学の過去問を解き、そこで不足している内容を確認して、必要な類題を参考書から選んで演習するという方法を取りました。
この記事では、このような実際の指導経験も踏まえて、
- MARCH理系の数学はどのくらいのレベルなのか
- 数学が苦手な場合、どこから勉強を始めればよいのか
- 青チャートなどの参考書をどこまで仕上げればよいのか
- MARCH各大学で数学の出題にどのような違いがあるのか
- 早稲田理工や国公立大学を第一志望にする場合、MARCH対策をどう位置づけるのか
- 参考書と過去問をどのように行き来して勉強するのか
を順番に解説します。
MARCH理系数学の参考書ルートを考えるときに重要なのは、参考書の名前から決めるのではなく、現在の数学力と第一志望から必要な勉強を決めることです。
その前提から確認していきましょう。
この記事でわかること
- MARCH理系数学では、どのレベルまで仕上げればよいのか
- 青チャートなどの参考書を、どこまで使えばよいのか
- 明治・青学・立教・中央・法政で、数学の出題にどのような違いがあるのか
- MARCHの過去問を、いつから・どのように使えばよいのか
- 早稲田理工・国公立理系を第一志望にする場合、MARCH対策をどう組み込むのか
MARCH理系の数学はどのくらいのレベル?
MARCH理系の数学では、教科書の公式を覚え、参考書の典型問題を解けるだけでなく、「どの知識を使うのか」を自分で判断し、複数の内容をつなげて解けるところまでを目標にしたいです。
ただし、最初から難関大学向けの難問を解ける必要がある、という意味ではありません。
私が数学を指導するときも、まず確認するのは難問が解けるかどうかではなく、
教科書の内容を理解しているか
→ 標準問題を解説なしで解けるか
→ 初めて見る問題でも使う知識を選べるか
→ 過去問の中でその知識を使えるか
という順番です。
実際のMARCH理系の入試問題を見ると、この「標準的な知識を、自分で選んで組み合わせる力」が必要になる問題が確認できます。
教科書の基本事項は「知っている」だけでは足りない
まず土台になるのは、教科書レベルの基本事項です。
たとえば、
- 微分して増減を調べる
- 定積分を計算する
- 数列の漸化式を扱う
- ベクトルの内積を利用する
- 複素数を複素平面上の点として考える
- 確率で場合分けする
といった内容です。
MARCH理系だからといって、こうした基本事項を飛ばして特別な解法だけを覚えるわけではありません。
重要なのは、「微分の問題だから微分する」と書かれていなくても、自分で微分を使うと判断できることです。
参考書では「微分法」「数列」「ベクトル」と章が分かれているため、使う知識をある程度予測できます。
ところが、入試では自分で判断しなければなりません。
そのため私は、教科書の例題を一度解けたことよりも、少し時間を空けて、解説を見ずに類題まで解けるかを重視しています。
標準問題を「解説なし」で解けることが一つの基準になる
青チャートなどの網羅系参考書を使う場合も、何周したかだけでは到達度を判断できません。
たとえば、
問題を見る
↓
解き方が分からないので解説を見る
↓
解説を読んで理解する
↓
次の問題へ進む
という学習を続けていると、「参考書はかなり進んだのに、過去問になると解けない」という状態になることがあります。
私の指導では、解説を読んで理解した後に、もう一度解説を閉じて解いてもらいます。
さらに類題や後日の小テストでも確認します。
そこで初めて、
問題文から自分で解法を判断し、正解まで出せるか
を確認します。
これは、これまで200名以上の生徒を指導する中でも特に重視してきた点です。
「解説を読めば分かる」と「入試で自分で解ける」は分けて考える必要があります。
MARCH理系では、標準知識を複数つなげる問題も出る
ここから先は、実際の入試問題を見ると分かりやすくなります。
たとえば、2025年度の中央大学理工系の学部別選抜では、定積分から始まる問題で、
定積分
→ 部分積分
→ 数列の漸化式
→ 極限
→ 無限級数
と進む大問が出題されています。

一つひとつを見れば、大学受験数学で学習する内容です。
しかし、
「部分積分の問題」
「漸化式の問題」
「極限の問題」
と別々に出されるわけではありません。
このような問題を見ると、MARCH理系数学で必要になる力を「難しい公式をどれだけ知っているか」だけで考えるのは十分ではありません。
すでに学習した標準的な知識を、問題の流れに応じて組み合わせられるかも確認する必要があります。
「青チャートの例題ができる=MARCHの過去問が解ける」とは限らない
ここは、参考書選びで特に注意したいところです。
青チャートなどで標準的な解法を身につけること自体は重要です。
しかし、
網羅系参考書の例題を解けること
と、
MARCH理系の過去問を自力で解けること
の間には、もう一段階あります。
参考書では単元ごとに整理された問題を解きます。
一方、実際の入試では、
「これは数列のこの解法を使う」
「ここから積分に切り替える」
「前の設問で求めた結果をここで利用する」
といった判断を自分で行います。
そのため、青チャートを使うのであれば、
例題を理解する
→ 解説なしで解き直す
→ 類題を解く
→ 単元が混ざった問題を解く
→ 過去問で使えるか確認する
ところまで進めたいです。
「青チャートを何周すればMARCHに受かるか」という回数だけでは、判断しにくい理由もここにあります。
過去問の大問(1)(2)で、教科書レベルの定着も確認できる
一方で、MARCH理系の過去問だからといって、すべてが難しい問題というわけでもありません。
年度や大学・方式によっては、大問の(1)(2)に、教科書で学習する基本事項を使って解ける問題が含まれています。
これは、数学が苦手な受験生にとって非常に重要です。
過去問を解いて(1)から手が止まったときに、
「MARCHの数学は難しすぎる」
と判断するのではなく、
そもそも教科書で習った内容が、自分で使える状態になっているか
を確認できます。
私はこのため、高3の直前期だけでなく、高2や高3前半でも、すでに学習した単元については過去問の一部を使うことがあります。
過去問を「合格点を取れるか調べるもの」だけではなく、現在の学力を診断する問題として使うためです。
たとえば微分の(1)ができなければ、難しい入試問題を増やす前に教科書へ戻る。
(1)(2)は解けるのに、その先で複数の単元をつなげられないのであれば、標準問題から融合問題へ進む。
このように、過去問によって次に取り組む教材を変えます。
MARCH理系に必要なのは「難問が解けるレベル」とは限らない
MARCHという大学群の名前を見ると、
「かなり難しい問題集まで終わらせなければならないのではないか」
と考えるかもしれません。
しかし、少なくとも数学が苦手な状態から目指す場合、最初に優先したいのはそこではありません。
まず、
教科書の基本問題を解ける
→ 標準問題を解説なしで解ける
→ 類題でも解法を選べる
→ 複数単元を組み合わせた問題を解く
→ 志望大学の過去問で使えるか確認する
という段階を作ります。
実際、私が指導した明治大学合格者にも、高3の12月時点で基本事項に抜けが残っていた生徒がいました。
その生徒は、難しい数Ⅲの問題について解法の手順を覚えるような勉強をしていましたが、過去問を確認すると、基本的な剰余の定理を十分に使えない状態でした。
そこで難しい問題を増やすのを一度止め、教科書まで戻りました。
さらに、明治大学の過去問から基本事項を確認できる問題を複数年度分選び、教科書問題と一緒に解き直しました。
最終的には明治大学に合格しています。
この事例からも、MARCH理系を目指すからといって、常に難しい問題へ進めばよいわけではないと考えています。
必要なレベルは、最後は志望大学の過去問から決める
そして重要なのは、「MARCHレベル」という一つの基準だけで数学の到達点を決めないことです。
明治・青山学院・立教・中央・法政では、同じ理系数学でも出題形式や問題の組み立て方が異なります。
さらに、同じ大学でも年度・学部・入試方式によって出題形式は変わります。
そのため、最終的な到達点は参考書の表紙に書かれた「MARCHレベル」「難関私大レベル」といった表示だけで判断せず、実際に受験する大学・学部・方式の過去問で確認します。
大学別の出題傾向を説明する際には、各大学が公開している入試問題・解答例・出題意図などの一次資料も確認し、「2025年度○○方式では」のように年度・方式を明記すると、より正確に対策できます。
MARCH理系の数学でまず目指したいのは、難問をたくさん解ける状態ではなく、教科書から標準レベルの知識を解説なしで使い、複数の内容が組み合わされた問題でも自分で解法を選べる状態です。
そのうえで、実際の過去問を使って志望大学に必要なレベルとの差を確認し、不足している部分だけを補っていくことが大切です。
MARCH理系対策の数学参考書ルートとは?
MARCH理系数学の参考書ルートは、「この参考書の次はこの問題集」と教材を難易度順に並べるより、現在の学力と第一志望の過去問を基準にして、必要な教材へ戻ったり進んだりする形で考えるのがおすすめです。
前のセクションでは、MARCH理系の数学でどの程度の力が必要なのかを説明しました。
ここでは「どのレベルまで必要か」ではなく、実際に参考書をどう使ってそこまで到達するかに絞ります。
私が指導するときの基本的な流れは、
教科書・基本問題
→ 網羅系参考書などの標準問題
→ 解説なしで解き直す
→ 過去問
→ 解けなかった原因を確認する
→ 必要な教材・単元だけ戻る
→ 類題
→ 再び過去問
です。
特に重要なのは、参考書を最後まで終えてから過去問へ進むのではなく、過去問を途中に入れて参考書の使い方を決めることです。
最初の参考書は志望大学ではなく「今、自力で解けるレベル」から決める
MARCH理系を志望すると、
「MARCHなら青チャートから始めるべきか」
「基礎問題精講では足りないのか」
「もっと難しい問題集が必要なのか」
と、大学名から参考書を選びたくなるかもしれません。
しかし、最初に見るべきなのは志望大学の難易度ではなく、現在どこまで自力で解けるかです。
たとえば、教科書の章末・節末問題で頻繁に手が止まる単元なら、入試問題集を増やすより、まず教科書へ戻ります。
反対に、教科書問題は十分に解けているのであれば、標準的な入試問題へ進めます。
一人の受験生でも、
- 微積分は標準問題から始める
- 空間ベクトルは教科書へ戻る
- 確率は入試問題へ進む
- 複素数平面は基本例題を復習する
というように、単元ごとにスタート地点が違っても構いません。
実際、これまで紹介した横国第一志望の生徒も、この方法で学習内容を分けています。
参考書ルートは一人につき一本ではなく、単元ごとに違ってよいと考えたほうが、数学が苦手な受験生には使いやすくなります。
青チャートなどの網羅系参考書は「全部同じ演習量」でやらなくてよい
青チャートなどの網羅系参考書は、大学受験数学で必要になる典型的な考え方を確認するために利用できます。
ただし、最初から最後まで、すべての問題を同じ回数繰り返す必要はありません。
私が重視しているのは、
その生徒ができない問題に時間を使うこと
です。
たとえば、すでに安定して解ける積分計算を何度も繰り返す一方で、苦手な空間ベクトルを後回しにしていては、参考書を進めても弱点が残ります。
そこで問題を、
①解説なしで安定して解ける
②一度解いたが、もう一度確認したい
③解説を見なければ解けない
④前提となる内容から分からない
程度に分けます。
①なら頻繁に繰り返す必要はありません。
③なら同じ問題と類題を解き直します。
④なら、その参考書にこだわらず教科書や前の単元へ戻ります。
こうすると、「青チャートを3周する」といった回数ではなく、問題ごとの理解度によって復習回数を変えることができます。
参考書の解説を読んだ後は、必ず「何も見ずに解く時間」を作る
参考書を使ううえで、私が特に重視しているのがここです。
数学が苦手な生徒の場合、
分からない
→ 解説を読む
→ 納得する
→ 次へ進む
という学習になっていることがあります。
しかし、これでは「解説を理解する勉強」が中心になり、自分で問題を解く時間が少なくなります。
私の指導では、解説を読んで内容を理解したら、もう一度問題だけを見てもらいます。
そして、
問題文を読む
→ 何を使うか判断する
→ 式を立てる
→ 最後まで計算する
ところまで、解説なしでできるか確認します。
さらに、その場でできただけでは終わらせません。
類題を家庭学習にし、次の指導時には、その中からこちらで問題を選んで小テストをすることもあります。
参考書ルートでは「何冊終わったか」に目が向きやすいのですが、一冊の中の問題をどこまで自力で再現できるようにしたかのほうが重要です。
過去問は参考書を全部終えてからでは遅い?
参考書ルートを考えるときに、
教科書を終える
↓
青チャートを終える
↓
入試問題集を終える
↓
最後に過去問
という順番を想定することがあります。
しかし私は、過去問をもっと早い段階から参考書ルートの中に入れてよいと考えています。
もちろん、高2の段階で未習範囲を含めて100分の試験を丸ごと解く必要はありません。
すでに習った単元だけでも構いません。
目的は合格最低点を取ることではなく、
「次にどの参考書の、どの単元を勉強する必要があるのか」を見つけること
です。
過去問を解いてみて、公式そのものを忘れていたなら教科書へ戻ります。
公式は知っているものの典型的な解法を使えないなら、網羅系参考書の例題へ戻ります。
標準問題なら解けるのに、入試問題になると方針を立てられないなら、類題や融合問題を増やします。
このようにすると、過去問が参考書ルートの「最後」ではなく、次にやる教材を決めるための診断になります。
過去問で見つけた弱点だけ、参考書から類題を選ぶ
過去問で解けない問題が見つかった後も、参考書を最初からやり直す必要はありません。
必要な問題を選びます。
これは、私が実際に大学受験生を指導するときにも行っている方法です。
横浜国立大学理工学部を第一志望として、明治大学と東京理科大学理学部に合格した生徒の場合、受験期には横国の過去問を中心にしながら、解けなかった内容について旺文社の『総合的研究』などから私が類題を選びました。
たとえば空間ベクトルに問題があれば、空間ベクトルの標準問題へ戻る。
複素数平面の軌跡で止まれば、そのタイプを集中的に練習する。
一方、得意だった数Ⅲの計算については、参考書を一からやり直さず、他大学の入試問題などを使った10分程度の確認テストで維持しました。
つまり、
過去問
→ できなかった原因を特定
→ 必要な類題だけ選ぶ
→ 解説なしで解けるまで確認
→ 過去問へ戻る
という使い方です。
これなら、参考書を増やし続けなくても、志望校に必要な部分を補強できます。
難しい参考書へ進むかどうかも、過去問から決める
標準的な参考書を終えた後、
「次はもっと難しい問題集をやるべきか」
という問題が出てきます。
ここでも、参考書の一般的な難易度表だけで決める必要はありません。
第一志望の過去問を解いて判断します。
たとえば、
標準問題そのものを落としている
のであれば、難しい参考書へ進む段階ではありません。
一方、
標準問題は安定して取れているが、第一志望ではその先の問題が必要
という状態なら、その単元だけ難度を上げます。
特に早稲田理工などを第一志望としてMARCHを併願する場合には、この考え方が重要です。
すべての単元を一斉に難関大レベルへ上げるのではなく、
- 複素数平面は発展的な軌跡・図形問題まで
- 微積分は図形との融合問題まで
- 苦手なベクトルは標準問題をもう一度
- 十分できている計算分野は短時間で維持
というように、第一志望の過去問から必要になった単元だけ深くすることができます。
参考書ルートは「一本道」ではなく往復して作る
したがって、MARCH理系数学の参考書ルートを一本の線で表す必要はありません。
私が数学が苦手な理系受験生にすすめたいのは、次のような進め方です。
教科書・基本問題
↓
網羅系参考書などで標準問題を確認
↓
解説なしで解き直す・類題を解く
↓
習った範囲から過去問を解く
↓
解けなかった原因を確認する
↓
教科書・標準問題・発展問題の必要な場所へ戻る
↓
類題で確認する
↓
もう一度過去問を解く
ここで大切なのは、「戻る」ことを失敗だと考えないことです。
過去問を解いた結果、教科書へ戻る必要があると分かったのであれば、それも過去問を解いた成果です。
逆に、標準問題では不足していると分かった単元だけ、一段上の問題へ進めばよいのです。
MARCH理系数学の参考書ルートは、参考書を難易度順に何冊も終わらせることではなく、「過去問で現在地を確認する→必要な教材へ戻る、または進む→類題で定着を確認する→もう一度過去問で試す」という往復を繰り返して作るのが基本です。
MARCH理系を受けるなら第一志望から数学対策を決めるべき?
MARCH理系を受験する場合でも、数学対策を「MARCHレベル」という一つの基準だけで決めるのではなく、第一志望がどこなのかを先に決め、そこから必要な学習内容を逆算することが大切です。
同じ明治大学や中央大学を受験する生徒でも、
- MARCH理系が第一志望
- 早稲田理工が第一志望でMARCHを併願
- 横浜国立大学や筑波大学などの国公立が第一志望でMARCHを併願
では、数学に求める到達点や受験勉強の配分が変わります。
ここで重要なのは、前のセクションで説明した「どの参考書を使うか」ではありません。
第一志望によって、数学のどの分野を、どこまで深く勉強する必要があるのかを変えることです。
MARCH理系が第一志望なら、受験する大学の問題に合わせて仕上げる
MARCH理系を第一志望にする場合は、実際に受験する大学の過去問を基準に対策を絞っていきます。
MARCHとまとめられる大学でも、数学の出され方は同じではありません。
これまで確認してきた実際の入試問題でも、微積分、複素数平面、確率、数列、ベクトル、軌跡、求積などが、大学によって異なる形で出題されています。
さらに、マーク式なのか記述式なのか、誘導が細かく用意されているのか、自分で解答の流れを作る必要があるのかによっても対策は変わります。
そのため、MARCH理系が第一志望なら、
「MARCHで出そうな問題を広く勉強する」
というより、
「自分が受験する大学・学部・方式で、どのように数学を解かされるのか」
まで確認して仕上げる必要があります。
大学別の具体的な違いについては、後述する出題傾向のセクションで詳しく見ていきます。
早稲田理工が第一志望なら、MARCHを基準に数学の上限を決めない
早稲田理工を第一志望として、MARCH理系を併願する場合は考え方が変わります。
この場合、MARCHの過去問だけを見て数学の到達点を決めるのではなく、早稲田の過去問で要求されているところまで数学を深める必要があります。
たとえば、2021年度の早稲田大学の基幹理工・創造理工・先進理工の数学では、複素数 に対する という変換から、
点の位置関係
→ 軌跡
→ 複素数平面上を動く領域
→ その面積
まで考える問題が出題されています。

ここまで対応することを考えるなら、複素数平面についても、
「複素数の計算ができる」
「極形式に直せる」
だけで学習を終えることはできません。
私なら、軌跡・図形変換・点や線分の位置関係・領域・面積まで演習対象を広げます。
また、2023年度の早稲田理工系では、空間内の三角形を 軸のまわりに回転させてできる立体について、断面を考えながら体積を求める問題が出題されています。

これは単純に、
という公式へ当てはめるだけの回転体ではありません。
空間図形を把握し、その断面を求め、それを積分による体積計算へつなげる必要があります。
このような実際の問題まで考えると、早稲田理工を第一志望にする生徒と、MARCHを第一志望にする生徒が、最後までまったく同じ数学対策になるとは限りません。
国公立理系が第一志望なら「記述できること」も学習目標になる
横浜国立大学などの国公立理系を第一志望にしてMARCHを併願する場合には、さらに記述答案を作る力も意識します。
これは、単に途中式をたくさん書けばよいという意味ではありません。
たとえば空間ベクトルなら、
条件を整理する
→ ベクトルを設定する
→ 内積や垂直条件を式にする
→ 必要な座標や長さを求める
という流れを自分で組み立てる必要があります。
私が実際に指導した、横浜国立大学理工学部を第一志望として明治大学と東京理科大学理学部に合格した生徒も、当初は、
「マークシートならできるが、記述は苦手」
という認識を持っていました。
ところが実際に確認すると、記述方法だけの問題ではありませんでした。
数学ⅠAに比べて数学ⅡBCに弱い部分があり、特に空間図形・空間ベクトルや複素数平面では、基本事項まで戻って確認する必要がありました。
つまり、
「記述が苦手だから記述問題をたくさん解く」
だけでは対策にならなかったということです。
第一志望の問題を解くために何が不足しているのかを単元ごとに確認し、そのうえで記述できる状態へ持っていきました。
第一志望によって「同じ単元でも、どこまでやるか」が変わる
第一志望から数学対策を考えるメリットは、単元ごとの学習範囲を決めやすくなることです。
たとえば複素数平面なら、第一志望によって重点の置き方が変わります。
MARCH第一志望であれば、まず受験大学の過去問に出ている典型的な複素数平面の問題を確実にします。
早稲田理工まで考えるなら、実際の出題を踏まえて、軌跡・図形変換・領域・面積などまで演習範囲を広げます。
国公立第一志望なら、それに加えて、条件から式を立てて解答として説明することも必要になります。
同じことは、微積分やベクトルにも当てはまります。
| 第一志望 | 数学対策で特に意識すること |
|---|---|
| MARCH理系 | 受験大学・学部・方式の過去問に合わせて得点できる状態を作る |
| 早稲田理工 | 標準事項を土台に、複数分野を組み合わせる問題や発展的な図形・軌跡まで扱う |
| 国公立理系 | 第一志望の出題範囲・難度に加えて、自分で方針を立てて記述する力をつける |
ここで「MARCHより早稲田、早稲田より国公立」という単純な難易度順に並べているわけではありません。
大学によって問題の性質が違うため、第一志望に必要な能力から学習内容を決めるということです。
MARCHの数学対策と第一志望の数学対策を別々に考えない
第一志望が早稲田や国公立だからといって、MARCH対策を完全に別の勉強として考える必要もありません。
数学ⅠA・ⅡBC・Ⅲの基本事項や標準的な解法には共通する部分があります。
そのため、
第一志望に必要な数学力を作る
→ MARCHの過去問を解く
→ 大学ごとの出題形式に合わせて調整する
という考え方ができます。
前述した横国第一志望の生徒についても、横国対策とは別に「MARCH用の数学」を最初から作り直したわけではありません。
第一志望に必要な数学を勉強しながら、明治大学や東京理科大学の入試に対応できるように過去問を使って調整しました。
このように考えると、受験校が増えるたびに参考書まで増やす必要はなくなります。
「MARCHレベル」ではなく第一志望を基準に到達点を決める
「マーチの理系数学なら、どの参考書までやればよいか」という疑問に対して、全員に同じ答えを出すのが難しいのはこのためです。
MARCHが第一志望なのか。
早稲田理工を第一志望としてMARCHを併願するのか。
国公立大学を第一志望としてMARCHを併願するのか。
これによって、数学で最後に到達したいところが変わります。
したがって、受験勉強を始める段階では、
「MARCHに必要な参考書は何か」
だけを考えるのではなく、
「第一志望の入試問題を解くために、数学の各単元をどこまでできるようにする必要があるのか」
を先に確認します。
そのうえでMARCHについては、実際に受験する大学・学部・方式の過去問を使い、出題形式や時間配分に合わせて仕上げます。
MARCH理系を受験する場合でも、数学対策の基準は「MARCHレベル」という一つの言葉ではなく第一志望に置きます。
MARCH第一志望なら受験大学の問題に合わせ、早稲田理工なら融合的・発展的な問題まで、国公立第一志望なら記述まで含めて必要な到達点を決め、そのうえでMARCHの過去問に合わせて調整することが大切です。
MARCHごとの各大学で理系数学の出題傾向はどう違う?
MARCH理系の数学は、大学ごとに「問題の難しさ」だけでなく、誘導の使い方、マーク式と記述式の違い、途中過程をどこまで自分で組み立てるかが異なります。
そのため、過去問では正答率だけでなく「どのように解答させる大学なのか」を確認することが重要です。
ここでは、これまで見てきた実際の2025年度入試問題を中心に、大学ごとの違いを整理します。
なお、入試形式は年度・学部・方式によって変わることがあります。
以下は各大学のすべての入試を一括して説明するものではなく、実際に確認した年度・方式をもとにした比較です。
法政大学も試験科目・時間・配点は学部によって異なると案内しており、青山学院大学も方式別に試験問題・解答例・出題意図を公開しています。
明治大学は、長い誘導の中で前の結果を使えるかを確認する
明治大学について注目したいのは、一つの大問の中で設問が段階的につながっている問題です。
以前確認した2025年度の数Ⅲの問題では、
微分
→ 複素数
→ 媒介変数表示
→ 二次曲線
→ 回転体の体積
と、一つの大問の中で内容が展開していました。
途中では、
から実部 、虚部 を求め、媒介変数 を消去して曲線を特定し、その図形的性質を使って最後の求積へ進みます。
ここで大切なのは、それぞれの単元を別々に解けることだけではありません。
(1)で求めた結果が、(2)(3)で何のために必要なのかを読みながら進むことです。
したがって、明治の過去問を練習するときには、正解したかだけでなく、
「誘導がなければ、どこで止まったか」
「前の設問の結果を次の設問で利用できたか」
まで確認すると、弱点を見つけやすくなります。
法政大学は、マーク式でも一問ずつ独立しているとは限らない
2025年2月11日に実施された法政大学のA方式Ⅰ日程では、理工学部などの数学は90分で実施されています。
法政大学の公式資料でも、この日程には理工学部の機械工学科・応用情報工学科などが含まれることが確認できます。
実際の問題を見ると、マーク式だからといって、短い計算問題を次々に処理するだけではありません。
たとえば数Ⅲでは、
という関数について、
極限
→ 1次導関数
→ 2次導関数
→ 増減
→ 凹凸
→ グラフ
→ 積分
→ 面積
まで進む問題がありました。
別の問題でも、
三角関数を含む関数
→ 微分
→ 2次微分
→ 増減・凹凸
→ グラフ
→ 置換積分
と設問が続きます。
したがって、マーク式対策を「答えを速く出す練習」とだけ考えないことが大切です。
長い誘導を読み、前の空欄で求めた結果を次の空欄へ正確につなげる力も必要になります。
青山学院大学は、マーク式と記述式の切り替えに対応する
2025年度の青山学院大学理工学部A方式では、前半がマーク式、後半が記述式という構成でした。
ここでは、同じ試験の中で問題への取り組み方を切り替える必要があります。
実際に確認した問題では、前半に確率や複素数平面があり、後半では、
- 関数のグラフと面積
- 点の軌跡と通過領域
- ベクトルと垂心
などが扱われていました。
特に記述問題では、答えだけを出すのではなく、条件から必要な式を自分で作っていく必要があります。
一方で、青山学院大学の問題を見ると、記述式だからといって最初から難問とは限らないことにも注意したいです。
別方式の2025年度理工学部B方式について、大学が公開している出題意図では、記述式の大問3を「2次関数、三角関数に関する基本的な知識と理解」、大問4を「数列とその和に関する基本的な理解」、大問5を「微分・積分に関する基本的な理解」を問う問題と説明しています。
これは、以前説明した「過去問を使って教科書レベルの定着を確認する」という方法ともつながります。
青学の過去問では、記述問題だから難しいと決めつけず、まず大問の前半を自分の力で処理できるかを確認したいところです。
立教大学は、途中過程を自分で組み立てる問題に注意する
2025年度の立教大学理学部の問題では、大問Ⅰが答えを求める小問、大問Ⅱ・Ⅲでは一部について途中経過を示す形式になっていました。
たとえば大問Ⅱでは、
微分
→ 接線
→ 傾き・切片
→ 軌跡
→ 図形
→ 回転体の体積
へ進みます。
大問Ⅲでは、
空間図形
→ 重心
→ 座標
→ 空間ベクトル
→ 直線
→ 平面との交点
と展開していきます。
ここでは、細かな誘導にすべて頼るというより、途中で自分で式を立てて論理をつなぐ場面が出てきます。
立教大学自身も、一般入試は原則として教科書の範囲から出題するとしており、教科書の内容を十分理解するとともに過去問を参考にするよう案内しています。
したがって、
教科書の範囲=簡単
と考えるのではなく、
教科書で習った知識を、何を使うか指定されていない問題の中で自分で選択できるか
という視点で過去問を見ることが大切です。
なお、理学部数学科は数学の出題内容が異なるため、立教大学も数学科志望者には数学科の過去問を確認するよう案内しています。
以下は、数学科のみに課された問題の一例です。

この問題はテクニックではなく、絶対値が1の複素数では「共役複素数=逆数」になるという、複素数平面で頻繁に使う基本事項を使います。
単に複素数を計算するだけではなく、複素数平面・共役複素数・1の5乗根・三角関数を一つにつなげて考えられるかがポイントになっています。
中央大学は、一つの大問の中で条件を発展させる問題に注意する
中央大学については、2025年度の理工系学部別選抜で確認した問題が一つの例になります。

この問題で注目したいのは、単に「漸化式の問題」「整数の余りの問題」と分けて考えるだけでは十分ではないことです。
最初は、漸化式
を使いながら、 を5で割った余りにどのような規則があるのかを調べます。
ところが(2)では、余り が分かっただけでは終わりません。
という商と余りの関係に戻り、今度は商 の余りについて考える必要があります。
さらに(3)では、5で割った余りから、50で割った余りへと条件が広がります。
つまり一つの大問の中で、
漸化式
→ 余り
→ 規則性
→ 商と余りの関係
→ より大きな数で割った余り
と、同じ設定を使いながら考える内容が少しずつ変わっていきます。
こうした問題では、参考書で「数列」「整数」と単元別に問題を解けるだけでなく、前の設問で分かったことを整理して、次の設問で何に使えばよいのかを判断することが必要です。
中央大学の過去問を復習するときも、
「大問3ができなかった」
だけで終わらせるのではなく、
(1)の余りの規則性までは見つけられたのか
(2)で an=5bn+rna_n=5b_n+r_n と置くところで止まったのか
(3)で50を法として考えるところまで発展させられなかったのか
というように、どの段階から考え方をつなげられなくなったのかを確認します。
そうすることで、「数列を全部やり直す」といった大きなくくりではなく、漸化式は使えるが整数の余りとの結びつきが弱いなど、次に復習すべき内容を具体的にできます。
中央大学のように一つの設定から設問が段階的に発展する問題では、前の設問を解いて終わりにせず、「この結果を次にどう使うのか」を考えながら進む練習が重要です。
5大学を比べると、過去問で見るポイントも変わる
ここまでの違いを、2025年度に確認した問題を中心に整理すると次のようになります。
| 大学 | 確認した問題で注目したい特徴 | 過去問で確認したいこと |
|---|---|---|
| 明治 | 長い誘導の中で複数分野がつながる | 前問の結果を次へ利用できるか |
| 法政 | マーク式でも一つの大問が長く展開する | 誘導を追いながら正確に処理できるか |
| 青山学院 | マーク式と記述式の両方がある方式 | 基本事項の処理と記述を切り替えられるか |
| 立教 | 自分で途中過程を組み立てる記述がある | 条件から必要な式を作り、説明できるか |
| 中央 | 一つのテーマから別の内容へ発展する | 前半で得た結果を後半へつなげられるか |
ただし、この表は「明治は必ずこの形式」「中央は毎年この問題」と固定的に分類するためのものではありません。
年度・学部・入試方式によって形式は変わるため、自分が受験する年度に近い過去問を複数年確認することが必要です。
大学が公式に入試問題・解答例・出題意図を公開している場合には、それも確認すると、大学が何を問おうとしているのかを把握しやすくなります。
青山学院大学は方式別にこれらを公開しており、立教大学にも過去問題・出題意図を確認できる公式ページがあります。
MARCH各大学の理系数学を比較するときは、「どこが一番難しいか」を決めるのではなく、マーク式か記述式か、誘導をどう利用するのか、途中過程をどこまで自分で作るのかを実際の過去問から確認することが大切です。
同じ数学力を持っていても、出題形式への対応によって得点のしやすさは変わるため、最後は大学・学部・方式ごとに仕上げていきます。
MARCH理系の過去問はいつから始めればいい?
MARCH理系の数学の過去問は、「高3の夏になったら始める」と時期だけで決めるのではなく、習った単元から早めに使い始めるのがおすすめです。
高2や高3前半では学力を確認するために使い、高3後半になったら本番を想定した年度別演習へと使い方を変えていきます。
過去問というと、
「参考書を全部終えてから解くもの」
「高3の秋から時間を測って解くもの」
と考える受験生もいるでしょう。
しかし、私は数学の指導では、もっと早い段階から過去問を使うことがあります。
目的が違うからです。
高2や高3前半で過去問を見る目的は、合格最低点を取れるか判定することではありません。
今まで勉強した数学が、実際の入試問題で使える状態になっているかを確認するために使います。
例えば高2の夏・高3の4月ごろに過去問へ触れ、現在地と志望校までの距離を確認するのも良いでしょう。
本格的な分析・演習とは分けて考えていることも重要です。
高2でも、習った単元の問題なら解いてみる
高2の段階では、数学ⅢCまで学習が終わっていない生徒もいます。
その状態でMARCH理系の過去問を1年分丸ごと解く必要はありません。
すでに学校で習った単元だけ抜き出して解けば十分です。
たとえば数列まで学習したなら、志望大学の数列の大問を探してみます。
微分を学習したなら、微分を使う大問の前半だけでも構いません。
複素数平面を習ったら、複素数平面の過去問を一題解いてみます。
ここでは制限時間も、それほど気にする必要はありません。
確認したいのは、
「学校や参考書では解けていた内容を、大学入試の問題として出されても使えるか」
です。
これなら高2でも過去問を利用できます。
大問の(1)(2)は、基礎の定着を調べる材料になる
私が早い時期から過去問を使いたい理由の一つが、大問の前半を見ると、基本事項の定着度が分かることがあるからです。
実際の入試問題を見ると、一つの大問すべてが最初から難しいとは限りません。
大問の(1)や(2)では、教科書で学習する公式や基本的な考え方を使わせ、そこから後半へ発展する問題があります。
これまで確認してきた青山学院大学の数Ⅲの問題でも、微分・積分や数列について、前半では教科書で学ぶ基本事項を使って進められる問題がありました。
そのため私は、
「参考書の基本問題ができたから、基礎は大丈夫」
だけで判断せず、過去問の前半も利用して確認します。
たとえば微分なら、
- 導関数を求められるか
- 増減を調べられるか
- 極値を求められるか
- グラフにつなげられるか
といったことを、実際の入試問題の中で確認できます。
「教科書レベルの知識で解ける」と「簡単」は違う
ここは、数学が苦手な理系受験生には特に注意してほしいところです。
過去問の(1)が教科書で習う知識を使う問題だからといって、誰でも簡単に解けるという意味ではありません。
教科書では、
「この節では微分を使う」
「ここでは数列の和を求める」
と、何を使うのかが分かった状態で問題を解くことが多くなります。
ところが入試では、自分で問題文を読んで、
これは何を使う問題なのか
を判断しなければなりません。
たとえば、これまで見た中央大学の問題では、
という漸化式から、5で割った余り、商を5で割った余り、さらに50で割った余りへと進みます。
使われている一つ一つの知識を知っていても、
漸化式と整数の余りを結びつけて考える
ところで止まる可能性があります。
過去問を早く使う意味は、この「知っている」と「問題の中で使える」の差を見つけるところにもあります。
(1)(2)で止まったら、その原因を確認する
早い時期に過去問を解くと、当然、解けない問題も出てきます。
ここで大切なのは点数ではありません。
なぜ解けなかったのかを確認します。
たとえば、
「公式を忘れていた」
のであれば、その単元の基本事項を確認します。
「公式は覚えているが、問題文から使うことに気づかなかった」
のであれば、同じ知識を使う別の問題でも確認します。
「(1)はできたが、(2)で(1)の結果を利用できなかった」
のであれば、設問同士のつながりを読み取る練習が必要です。
同じ「不正解」でも、原因によって次にする勉強は違います。
私は過去問を、できなかった問題を数えるためではなく、できなかった原因を見つけるために使うことを重視しています。
高3前半までは「1年分の点数」より単元ごとに見る
高3になっても、まだ数学ⅢCの学習途中であれば、年度別の得点を必要以上に気にする必要はありません。
むしろ、
数列はどこまでできるか
ベクトルはどの問題で止まるか
微積分では計算と立式のどちらで失点するか
複素数平面では基本計算と軌跡のどちらに問題があるか
というように、単元ごとに見たほうが、その後の勉強につなげやすくなります。
特に数学が苦手な生徒の場合、
「明治の数学が30点だった」
という結果だけでは、何を勉強すればよいのか分かりません。
一方、
「微積分の計算はできたが、図形と組み合わされると立式できない」
と分かれば、次に取り組む内容が具体的になります。
高3の夏以降は、少しずつ「入試本番として解く」割合を増やす
基礎・標準問題の学習が進み、入試範囲がおおむねそろってきたら、過去問の使い方を変えていきます。
それまでの
単元ごとの学力確認
から、
1年分をまとめて解く入試演習
へ移していきます。
この段階では、
- 制限時間内にどこまで解けるか
- どの大問から解くか
- 一問に時間をかけすぎていないか
- 記述問題で途中過程を書けているか
- マーク式の誘導を正確に追えているか
といったことも確認します。
MARCH理系では大学・学部・方式によって問題構成が異なるため、ここからは数学そのものの学力確認だけでなく、実際の試験への対応という意味が強くなります。
過去問は「いつから始めるか」より「何のために使うか」で考える
過去問を始める時期について、
「高2では早すぎる」
「高3の夏から」
「秋から本格的に」
と一つの日付を決める必要はありません。
同じ過去問でも、時期によって目的を変えればよいからです。
| 時期 | 過去問の主な使い方 |
|---|---|
| 高2 | 習った単元だけ解き、入試でどう使われるか知る |
| 高3春〜前半 | 大問の前半などから、基本事項を実際に使えるか確認する |
| 高3夏以降 | 1年分を使い、弱点・時間配分・問題構成を確認する |
| 入試直前期 | 本番を想定して大学・学部・方式ごとに仕上げる |
これは「高2から何年分も消費する」という意味ではありません。
直近年度を大量に使ってしまうのではなく、早い時期は必要な単元や設問を選んで利用し、本番形式で解く年度は高3後半のために残しておく方法もあります。
旺文社も、過去問は単純に量をこなすより、直近年度を丁寧に扱って近年の傾向を把握することを勧めています。
MARCH理系の数学の過去問は、「参考書が全部終わったら始める」のではなく、高2・高3前半から習った範囲を学力確認に使い、高3後半には年度別・時間制限つきの入試演習へ移していく。
このように目的を変えながら使うことで、過去問を直前期だけの教材にせず、受験勉強の途中から活用できます。
【指導例】横国を第一志望にして明治・理科大に合格した数学対策
ここまで、MARCH理系の数学について、必要なレベルや参考書の使い方、第一志望から考える方法、大学ごとの出題傾向、過去問を始める時期について説明してきました。
ここでは、それらの一般的な話を繰り返すのではなく、私が実際に高校3年生から受験終了まで指導した生徒について、「何ができていて、何ができていなかったのか」をどのように分けて対策したのかを紹介します。
この生徒は横浜国立大学理工学部を第一志望として勉強し、併願した明治大学と東京理科大学理学部に合格しました。
本人は当初、
「マークシートならできるけれど、記述が苦手」
という認識を持っていました。
しかし、実際に問題を解いてもらうと、単純に「記述力が足りない」という状態ではありませんでした。
数学Ⅲの計算はかなりできる。
確率も得意。
一方で、数学ⅡBCには基本事項から確認したほうがよい単元があり、特に空間図形・空間ベクトルと複素数平面には弱点がありました。
そこで、「記述対策」という大きなくくりで勉強するのではなく、単元ごとに状態を分けて対策しました。
数Ⅲの計算は、新しい問題集を増やさず短時間のテストで維持した
この生徒の場合、数学Ⅲの計算そのものは比較的よくできていました。
そこで、できている計算分野に長い時間を使うことはしませんでした。
指導では、横国だけに限定せず他大学の入試問題も利用して、10分程度で取り組める計算問題を小テストのように出すことがありました。
ここで確認したかったのは、新しい解法を増やすことではありません。
すでにできている積分などの計算を、時間を空けても正確に処理できるかということです。
できる分野は短時間で維持し、その分、後述する空間ベクトルや複素数平面に学習時間を回しました。
確率は得意だったので、横国対策として必要な問題に絞った
確率も、この生徒にとって比較的得意な分野でした。
そのため、確率の基本問題を最初から大量にやり直すことはしていません。
横国の過去問で確認した問題や、確率と漸化式を組み合わせて考えるタイプの問題など、第一志望対策として練習しておきたいものを中心に扱いました。
ここでも、すべての単元を同じ量だけ勉強するのではなく、
すでにできる内容は確認にとどめる
という方針です。
このようにしたことで、数学の学習時間を、より改善の余地が大きかった分野に使うことができました。
最も時間をかけたのは、空間図形・空間ベクトルだった
一方、この生徒が特に苦手としていたのが空間図形・空間ベクトルでした。
当時、指導で扱った横国の過去問を確認すると、教科書の節末問題や標準問題で学ぶ空間ベクトルの考え方を土台として解ける問題が複数ありました。
そこで、難しい入試問題を次々に追加するのではなく、まず教科書の節末問題まで戻りました。
たとえば、
- 空間内の点をベクトルで表す
- 内分点を求める
- 内積から垂直条件を作る
- 直線をベクトルで表す
- 平面との交点を求める
といった内容です。
それができるようになってから、旺文社の『総合的研究』の標準的な問題、さらに横国の過去問へ戻しました。
この生徒の場合、「横国の記述問題ができないから、もっと難しい記述問題を解く」という対策ではなく、入試問題を解くために必要な空間ベクトルの基本操作を一つずつ確認することのほうが必要でした。
複素数平面では「円を円に写す軌跡」を重点的に練習した
もう一つ、時間をかけたのが複素数平面です。
特に練習したのが、複素数の変換によって円が円に写されるような軌跡の問題でした。
横国の過去問と『総合的研究』の類題を使い、必要に応じて教科書にも戻りました。
このとき、かなり基本的な式変形についても確認しています。
たとえば、
という関係です。
本人によると、学校では共役複素数を使ったこのような計算をあまり扱っていなかったようでした。
しかし、複素数平面の軌跡を考えるときには、
のように、複素数とその共役を実数の条件へ変換する操作が必要になることがあります。
そのため、発展的な軌跡だけを練習するのではなく、このような基本的な式変形も繰り返しました。
この生徒の場合は、
基本的な複素数の計算
→ 共役複素数を使った式変形
→ 軌跡
→ 横国の過去問
という順に、できないところまで戻って確認しました。
微積分は、難問を増やすより求積を安定させた
数学Ⅲでは計算力があったため、難しい微積分の問題を際限なく増やすことはしませんでした。
横国の過去問には年度によって難しい問題もありますが、この生徒については、最後まで標準的な微積分を確実に得点につなげることを優先しました。
特に確認したのが、
面積や回転体の体積などの求積問題です。
積分計算そのものができても、
「どの部分を積分するのか」
「どの図形を回転させているのか」
が分からなければ、体積は求められません。
そのため、計算練習だけでなく、図を描いて積分区間や求める領域を確認するところまで含めて練習しました。
家庭学習も、単元によって内容を変えた
このような分け方は、授業中だけではなく家庭学習にも反映しました。
この生徒に、
「数学が苦手だから、問題集を最初から全部やり直そう」
という宿題は出していません。
たとえば、
数Ⅲの計算 → 短時間で確認する
確率 → 必要な入試問題を中心に確認する
空間ベクトル → 教科書の節末問題まで戻る
複素数平面 → 基本事項を確認してから軌跡の類題を繰り返す
というように、内容を変えました。
そして、家庭学習で取り組んだ問題についても、次の指導で本当にできるようになったかを確認しました。
宿題で一度正解したから終わりではなく、こちらで問題を選び直して、解説を見ない状態でもう一度解けるかを見ます。
明治対策では、12月でも教科書まで戻った
この生徒について、もう一つ印象に残っているのが明治大学の過去問を使ったときのことです。
高校3年生の12月の時点で、高次方程式で使う剰余の定理の基本的な内容が十分に定着していないことが分かりました。
一方で本人は、その時期に数学Ⅲの難しい参考書の問題にも取り組んでおり、解法を順番に覚えるような勉強になっていました。
そこで、その進め方をいったん止めました。
記憶している範囲では、きっかけになったのは明治大学の過去問の大問1だったと思います。
その後、明治の過去問についても、直近数年をただ通して解くのではなく、基本事項の確認に使える問題を私のほうで5年分ほど追加して選びました。
そこで基本事項の不足が見つかれば、12月であっても教科書の問題まで戻りました。
「受験直前だから難しい問題だけをやる」のではなく、入試問題を解くために必要な知識が抜けているなら、その時点からでも戻るという方針です。
最終的に、この生徒は明治大学にも合格しました。
この指導例で重要だったのは「数学が苦手」を細かく分けたこと
この生徒は、英語など他教科には比較的強みがあったと記憶しています。
そのため、理系を目指すうえで残っていた大きな課題の一つが、数学をどこまで安定させられるかということでした。
そこで私は、「数学が苦手」という一言でまとめず、
すでに得点源になっている分野
基本事項へ戻ったほうがよい分野
第一志望に合わせて重点的に練習する分野
に分けました。
結果として、
| 分野 | 当時の状態 | 実際に行った対策 |
|---|---|---|
| 数Ⅲの計算 | 比較的得意 | 10分程度の小テストで維持 |
| 確率 | 得意 | 横国対策で必要な問題を中心に演習 |
| 空間図形・ベクトル | 大きな弱点 | 教科書節末→『総合的研究』→過去問 |
| 複素数平面 | 弱点 | 基本計算→軌跡の類題→過去問 |
| 微積分の求積 | 得点につなげたい | 面積・回転体など標準問題を反復 |
| 明治で見つかった基本事項 | 抜けがあった | 高3・12月でも教科書まで戻る |
という形になりました。
この指導例で大切だったのは、横国・明治・理科大のために別々の数学を勉強したことではなく、一人の生徒の数学を単元ごとに細かく見て、「維持するところ」「戻るところ」「第一志望に合わせて深めるところ」を分けたことです。
数学が苦手な理系受験生でも、すべてを一からやり直す必要があるとは限りません。
できている分野までやり直すのではなく、実際に問題を解いて弱点を特定し、必要なところだけ戻って、自力で解ける状態まで作り直す。
横国を第一志望として明治大学・東京理科大学の合格を目指したこの生徒では、そのように数学対策を組み立てました。
数学で成績が上がらないときは何を見直す?
MARCH理系を目指して数学を勉強しているのに成績が上がらないときは、勉強時間や問題集の冊数を増やす前に、「問題を解く過程のどこで止まっているのか」を確認することが大切です。
ここまで、参考書の進め方や過去問の使い方について説明してきました。
ここでは教材や大学別対策ではなく、勉強しているのに結果につながらない生徒に、実際によく見られる学習上の問題に絞って考えます。
私が指導するときも、単純に「数学が苦手」とは考えません。
問題を解いている様子を見ながら、
問題文を正しく読めているのか
→ 使う知識を思い出せるのか
→ 方針を決められるのか
→ 式を立てられるのか
→ 最後まで正確に計算できるのか
→ 解いた後に自分で確かめられるのか
というように、どこで止まっているのかを確認します。
解説を読んだ直後だけ解ける状態になっていないか
数学の勉強で特に確認したいのが、解説を読んだ後の行動です。
問題が分からなかったので解説を読む。
解説を読めば、
「なるほど、そういうことか」
と理解できる。
ここまでは問題ありません。
しかし、そのまま次の問題へ進んでしまうと、実際には自分で解法を選んだ経験がないまま学習が終わっていることがあります。
私の指導では、解説を確認した後に、もう一度何も見ない状態で解いてもらいます。
ここで確認するのは、答えを覚えているかではありません。
問題文から必要な考え方を自分で出し、式を立て、最後まで正解できるかです。
翌日や数日後にもう一度解くとできなくなるのであれば、まだ定着したとは考えません。
「この問題は○○を使う」と最初から分かっている問題だけ解いていないか
単元別の問題集では解けるのに、模試や入試問題になると急に解けなくなる生徒がいます。
原因の一つは、問題集では使う単元が最初から分かっていることです。
「微分法」のページなら、微分することを考えます。
「数列の漸化式」のページなら、漸化式を使います。
「ベクトル」の章なら、ベクトルで考えます。
ところが入試問題では、
何を使えばよいのかを問題文から自分で判断しなければなりません。
そのため、単元別演習で正答率が高くなってきたら、異なる単元の問題を混ぜて解く練習も必要です。
私は小テストをするときにも、直前に勉強した問題をそのまま順番に出すのではなく、以前に学習した内容を混ぜることがあります。
問題を見た瞬間に、
「今日は微分のテストだから微分する」
と分かる状態をなくすためです。
式を立てたところで「分かったつもり」になっていないか
理系数学では、解法の方針が合っていても得点にならないことがあります。
特に数学Ⅲでは、
微分・積分の計算、式変形、場合分け、符号、積分区間
など、方針を決めた後にも多くの処理が残ります。
たとえば回転体の問題で、
「ここを積分すればよい」
と分かったとしても、
積分区間を間違える、半径を取り違える、展開や置換で計算ミスをするのであれば、入試では最後まで得点につながりません。
したがって、
方針が分かった=その問題ができる
とは判断しないようにします。
途中で解答を見ることなく、最後の答えまで出せるかを確認します。
計算ミスを「ケアレスミス」で終わらせていないか
「考え方は合っていたけれど、計算ミスをした」
という答案も注意が必要です。
一度だけなら偶然かもしれません。
しかし、同じ種類のミスを何度もしているなら、「ケアレスミス」という言葉だけで片づけないほうがよいでしょう。
たとえば、
- 符号を頻繁に落とす
- 分数計算で間違える
- 微分した後の整理で間違える
- 場合分けを一つ落とす
- 条件を書かずに不要な解まで残す
など、ミスにも傾向があります。
そこで、間違えた問題には「計算ミス」とだけ書かず、
どの計算で、何を間違えたのか
まで残します。
「符号を落とした」が何度も続くなら、そこは偶然ではなく改善対象です。
「解けなかった問題」だけでなく「偶然正解した問題」も見直す
復習では、不正解の問題だけに目が向きがちです。
しかし私は、正解した問題についても、本当に理解していたのかを確認することがあります。
たとえば、
「なぜこの式を立てたの?」
「なぜここで場合分けしたの?」
「この条件は何のために使ったの?」
と聞きます。
そこで説明できなければ、答えが合っていても理解が十分ではない可能性があります。
選択肢のある問題なら、途中で判断を誤っていても偶然正解することがあります。
逆に、考え方は正しいのに最後の計算だけで間違えることもあります。
そのため、○か×かだけでは、その生徒が何を理解しているのかは分かりません。
復習が「答えを書き写す作業」になっていないか
成績が上がらないときには、間違えた後の復習方法も確認します。
私が避けたいのは、
間違える
→ 赤ペンで解答を書く
→ 解説を読む
→ 終了
という復習です。
これではノートは完成しますが、次に同じ考え方が必要になったときに解けるとは限りません。
復習では、解説を理解した後にいったん閉じて、自分で解き直します。
さらに類題を解き、少し時間を空けてもう一度確認します。
私の指導では、家庭学習として解いた問題の中から、次回の指導時にこちらで問題を選んで解いてもらうことがあります。
生徒からすると、どの問題が出るか分かりません。
そこで再び正解できれば、少なくとも「解説を見た直後だけできた」という状態からは一段進んだと考えられます。
模試やテストの結果は「点数」より失点の種類を見る
成績が伸び悩んでいると、模試の偏差値や点数ばかりを見てしまいます。
しかし、次の勉強を決めるためには、失点をもう少し細かく分けたほうが役立ちます。
たとえば、間違えた問題を次のように整理できます。
| 失点した原因 | 見直すこと |
|---|---|
| 公式・定義を忘れていた | 基本事項を確認する |
| 問題文から使う知識を選べなかった | 単元を混ぜた演習をする |
| 方針は分かったが式を立てられなかった | 類題で立式を練習する |
| 途中計算で崩れた | ミスの種類を記録して計算を反復する |
| 時間が足りなかった | 解く順番・一問に使う時間を確認する |
| 解説を見れば分かった | 後日、解説なしでもう一度解く |
同じ50点でも、
「知識そのものが足りない50点」
と、
「解法は分かっているが計算と時間配分で落とした50点」
では、次にする勉強は違います。
成績が上がらないときは「勉強量」ではなく「学習の一周」を確認する
数学が伸びないと、
「もっと問題を解かなければ」
と考えがちです。
しかし、すでにかなり勉強しているのに結果が出ないのであれば、問題数を増やす前に、一問をどのように終わらせているのかを見直してみてください。
私が重視している一周は、
①まず自分で解く
→ ②分からなければ解説を確認する
→ ③解説を閉じて自分でもう一度解く
→ ④類題を解く
→ ⑤時間を空けて再度確認する
という流れです。
この⑤まで行かず、
解説を読んで理解したところで次へ進む
という学習が続いていると、勉強時間は増えても「自分一人で解ける問題」がなかなか増えないことがあります。
MARCH理系数学で成績が上がらないときは、難しい教材を追加する前に、「問題文を読む→使う知識を選ぶ→式を立てる→最後まで計算する→後日もう一度解く」のどこで止まっているのかを確認します。
成績を上げるために必要なのは、単に解いた問題数を増やすことではなく、一度学習した問題を、最終的に解説なしで自力で解ける問題へ変えていくことです。
MARCHから早稲田・国公立まで狙うなら、数学の対策はどうする?
MARCH理系に加えて早稲田理工や国公立大学まで受験するなら、大学ごとに別々の数学対策を作るのではなく、「共通して必要な数学」「第一志望のために深める数学」「併願校の形式に合わせる数学」の3つに分けて組み立てると整理しやすくなります。
ここまで、第一志望から必要な到達点を決めることや、MARCH各大学の出題形式の違いについて説明してきました。
ここではさらに、実際に複数の大学を受験するときに、限られた受験勉強の時間をどのように配分するかという視点から考えます。
たとえば、
「早稲田理工を第一志望にしてMARCHも受ける」
「横浜国立大学や筑波大学などの国公立を第一志望にしてMARCHも受ける」
という場合、受験校ごとに一から勉強を作り直していては時間が足りません。
そこで、まず受験校を横断して使える数学力を作り、その上に第一志望と併願校それぞれの対策を加えていきます。
最初に「どの大学でも使う数学」を受験勉強の中心にする
受験校が増えても、数学ⅠA・ⅡBC・Ⅲの基本事項そのものが大学ごとに別物になるわけではありません。
たとえば、
- 微分して増減や極値を調べる
- 定積分から面積や体積を求める
- ベクトルの内積から垂直条件を作る
- 数列の漸化式を処理する
- 複素数と共役複素数を扱う
といった内容は、さまざまな大学の問題を解く土台になります。
したがって、受験校が多いほど、
「早稲田用」「明治用」「中央用」と普段の勉強を細かく分けすぎないこと
が重要です。
まずは、どの大学でも使う内容を自力で処理できる状態にします。
その共通部分を土台として、必要なところだけ大学別に変えていきます。
第一志望のために深める単元を決める
共通部分を作った後は、第一志望の過去問から、さらに深く勉強する単元を選びます。
ここで大切なのは、すべての単元を同じように難しくする必要はないということです。
たとえば早稲田理工まで狙うのであれば、これまで紹介した実際の入試問題のように、複素数平面や空間図形でも、複数の考え方を組み合わせる問題まで視野に入ります。
一方、国公立大学を第一志望とする場合には、その大学で繰り返し問われているテーマを確認しながら、途中過程を自分で組み立てる練習も必要になります。
したがって、
全単元を一律に難しくする
のではなく、
第一志望で差がつきやすい単元や、自分が不足している単元を選んで深くする
という配分にします。
得意分野は「さらに難しくする」より得点源として維持する
難関大学を目指す生徒ほど、得意な単元についても、さらに難しい問題へ進みたくなることがあります。
しかし、受験勉強全体を考えると、必ずしもそれが最優先とは限りません。
すでに入試問題で安定して得点できる分野なら、得点源として維持することも重要です。
たとえば、
- 数Ⅲの計算は安定している
- 確率はかなり解ける
- 数列は標準的な問題ならほとんど落とさない
という状態なら、その分野ばかり難しくするより、別の弱点に時間を回したほうが全体の得点につながることがあります。
これは特に、早稲田や国公立とMARCHを併願する場合に重要です。
受験科目は数学だけではありません。
数学の中でも「伸ばす単元」と「維持する単元」を分けることで、他教科を含めた受験勉強全体の時間を確保できます。
第一志望対策とMARCH対策が重なる部分を利用する
第一志望の勉強が、そのままMARCH対策の一部になることもあります。
たとえば、第一志望対策として、
関数の増減からグラフを描き、面積・体積まで求める
練習をしていれば、MARCHで出題される微積分にも利用できます。
複素数平面について、軌跡や図形的な意味まで考える練習をしていれば、MARCHの複素数の問題にもつながります。
国公立対策として、自分で式を立てて途中過程を書く練習をしていれば、MARCHの記述問題でも利用できます。
このように、
第一志望対策と併願校対策の共通部分をできるだけ大きくする
ことが、複数大学を受験するときのポイントです。
勉強内容を大学名で分けるのではなく、数学の内容で重ねると考えると整理しやすくなります。
MARCHでは「新しい数学」より試験形式への調整を増やす
第一志望に必要な数学力を作ったうえでMARCHの過去問を解くと、数学の知識そのものではなく、その大学特有の解答形式に慣れることが課題になる場合があります。
たとえば、
- 長い誘導をどこまで利用するか
- マーク式で途中結果をどう管理するか
- 記述式でどこまで途中過程を書くか
- 制限時間の中で大問をどの順番で処理するか
といった部分です。
この段階では、新しい参考書を増やすより、
すでに身につけた数学を、その大学の試験で得点に変える練習
の割合を増やします。
第一志望の数学対策が十分に進んでいる生徒ほど、併願校ではこの「調整」が重要になります。
第一志望とMARCHの過去問を同じ時期に同じ量だけやる必要はない
複数大学を受験すると、
「早稲田も明治も中央も、全部10年分やらなければ」
と考えてしまうことがあります。
しかし、受験校すべてに同じ時間をかける必要はありません。
第一志望については、複数年度を使って、
よく出るテーマ
→ 自分の弱点
→ 記述の作り方
→ 時間配分
まで詳しく確認します。
一方、併願するMARCHについては、まず数年分を解いて、
第一志望対策だけでは対応しにくい部分が何か
を探します。
そこで大きな問題がなければ、必要以上に学習量を増やす必要はありません。
反対に、特定の大学だけ得点が安定しないのであれば、その大学の演習量を増やします。
受験校の数ではなく、実際の答案を見ながら過去問演習の量を変えるという考え方です。
共通対策・第一志望対策・併願校対策の3層で考える
早稲田・国公立からMARCHまで受験する場合の数学対策は、次の3層に分けると整理できます。
| 学習の層 | 目的 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 共通対策 | どの大学でも使う数学力を作る | 基本事項・標準問題・計算力 |
| 第一志望対策 | 第一志望で必要なところまで深める | 頻出分野・融合問題・記述など |
| 併願校対策 | 持っている数学力を得点につなげる | 出題形式・誘導・時間配分 |
この3つを完全に別々に勉強するわけではありません。
共通部分を中心にしながら、第一志望に必要な内容を上へ積み、MARCHについては実際の試験形式に合わせて調整するイメージです。
こうすると、
「MARCH用の参考書」
「早稲田用の参考書」
「国公立用の参考書」
をそれぞれ大量に用意する必要はなくなります。
受験直前ほど「何をやらないか」も決める
入試が近づくほど、新しい問題集や難しい問題に手を広げる時間は少なくなります。
この時期には、
できることを増やす
だけではなく、
残された時間をどこに使わないか
も決めます。
たとえば、第一志望でも出題可能性が低く、自分にとって習得まで非常に時間がかかる発展問題に何日も使うより、
すでにある程度できている微積分を確実に得点する、苦手なベクトルの標準問題を取り切れるようにする、併願校の試験時間に合わせて演習する、といった選択が必要になる場合があります。
この優先順位は、生徒によって変わります。
だからこそ最後まで、
「難しい問題をどこまでやったか」ではなく、「受験する大学で、今の自分がどの問題を得点にするのか」
という視点を持っておくことが大切です。
MARCHから早稲田・国公立まで狙う場合は、大学ごとに別々の数学を勉強するのではなく、「共通して必要な数学を固める→第一志望に必要な分野を深める→MARCHでは大学ごとの試験形式に合わせる」という3層で組み立てます。
そのうえで、得意分野は維持し、弱点には時間をかけることで、限られた受験勉強の時間を配分していくことが重要です。
MARCH理系の数学対策でよくある質問
MARCH理系の数学は青チャートだけで合格を目指せる?
青チャートなどの網羅系参考書だけで合否を判断することはできませんが、基礎・標準事項を身につける教材として活用できます。
大切なのは「青チャートを何周したか」ではなく、問題を見たときに解法を自分で選び、解説なしで最後まで解けるかです。
そのうえで志望大学の過去問を解き、足りない単元や問題形式が見つかったら類題を補います。
参考書を終えることではなく、過去問で得点できる状態にすることを目標にしてください。
MARCH理系の数学はいつから対策を始めるべき?
数学の基礎固めはできるだけ早く始め、過去問も習った単元から高2〜高3前半に使い始めて構いません。
最初から1年分を時間どおりに解く必要はありません。
数列を習ったら数列、微分を習ったら微分というように、既習範囲だけ過去問を利用できます。
高3後半になったら、1年分を制限時間内で解く演習へ移行します。
数学が苦手でもMARCH理系を目指せる?
数学が苦手でも、現在の弱点を単元ごとに特定して学習を組み直すことはできます。
「数学が苦手」とまとめるのではなく、公式を知らないのか、使う知識を判断できないのか、立式できないのか、計算で失点するのかを分けて考えることが重要です。
私の指導でも、できない単元は教科書まで戻る一方、すでにできる単元は短時間の確認にとどめるなど、状態に応じて学習内容を変えています。
MARCH理系の数学では難しい問題集まで必要?
全員が難しい問題集まで進む必要はありません。
まず、教科書から標準レベルの問題を解説なしで解ける状態を作ります。
その後、実際の過去問を解いて、第一志望に対して何が不足しているのかを確認します。
標準問題で失点している段階なら、難問を増やすより基本・標準問題の定着を優先します。
第一志望でさらに高度な問題が必要な単元については、その部分を選んで深めます。
MARCH理系と早稲田理工を併願する場合、数学対策は分けるべき?
数学の基礎・標準部分を別々に勉強する必要はなく、早稲田理工を第一志望とするなら、そこから逆算して数学対策を組み立てます。
共通する基礎・標準事項を固めたうえで、早稲田理工で必要となる融合問題や複素数平面、空間図形なども過去問に合わせて深めます。
MARCHについては、それぞれの大学・学部・方式の過去問を解き、マーク式・記述式、誘導、制限時間などに合わせて調整します。
MARCH理系の過去問が解けなかったら何をすればいい?
不正解だった問題の解説を覚えるのではなく、「なぜ解けなかったのか」を特定して必要な段階まで戻ります。
公式や定義を忘れていたなら教科書、典型的な解法が出てこなかったなら標準問題、単元を組み合わせられなかったなら類題や混合問題というように、原因によって戻る場所を変えます。
復習後は同じ問題や類題を解き、解説を見なくても自分で考え方を選び、式を立てられるかまで確認してください。
まとめ|MARCH理系数学は「第一志望」と「今の実力」から勉強を決める
MARCH理系の数学対策では、「MARCHならこの参考書をここまでやればよい」と一律に決めるのではなく、第一志望と現在の数学力の両方から、必要な学習を決めることが大切です。
この記事のポイントを整理すると、
- 教科書・標準問題を、解説なしで自力で解ける状態を土台にする
- MARCHでも大学・学部・方式によって出題形式が異なるため、実際の過去問を確認する
- 過去問は高3後半まで待たず、習った単元から学力診断として利用する
- 第一志望が早稲田理工や国公立なら、その大学に必要な数学を軸にしてMARCH対策を組み込む
- 成績が上がらないときは問題集を増やす前に、どこで解けなくなっているのかを特定する
ということになります。
特に数学が苦手な理系受験生の場合、難しい問題を増やすことが必ずしも最初の対策ではありません。
過去問を一題解く
→ どこで止まったのか確認する
→ 必要なら教科書まで戻る
→ 類題を解く
→ 解説なしで解けるか確認する
という作業を繰り返すことで、「数学が苦手」という大きなくくりを、具体的な学習課題へ変えていくことができます。

「MARCH理系を目指しているけれど、今の数学力から何を優先すればよいか分からない」
「早稲田や国公立も考えているが、どこまで数学をやればよいか分からない」
「参考書は進めているのに、過去問になると解けない」
という場合は、まず現在の答案と志望校の過去問を並べて、どの単元・どの段階から学習を組み直す必要があるのかを確認してみてください。
一人では判断しにくい場合は、数学専門の家庭教師として、現在の学力・使用している教材・第一志望と併願校を確認したうえで、どこまで戻り、何を優先して勉強するかを一緒に整理しています。
MARCH理系・早稲田理工・国公立理系に向けた数学の勉強について迷っている方は、体験授業・無料相談からご相談ください。


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